アイヌ問題とアイヌ政策検討市民会議について

暑い、ご苦労Summer・・・。

 北海道の先住民族はアイヌであるとして正式に規定されている。昔の北海道土産に多かったのは「川で鮭をとる木彫りの熊の置物」だった。私の家にもそれが置かれていたような記憶がうっすらある。この置物こそがアイヌ文化の伝統工芸品だと思っていたがどうやら違うようだ。アイヌの文化では「精巧に象られたものは魂を持って悪さをする」という考えがあり、動植物や人物を木彫りはもちろん絵画として描くこともないそうだ。木彫りの熊は徳川義親がスイス土産に買ったもので旧尾張藩士が北海道に入植した際に持ち込んだのがきっかけだという。付近の農民やアイヌが冬季の収入源として生産することを進められ、結果的に民芸品として有名になったようだ。

 さて、アイヌ政策検討市民会議という団体がある。2016年にアイヌ民族や市民、学者たちによって設立された。代表は北海道大の教授であるジェフリー・ゲーマン氏。設立目的はアイヌ政策を自分たちの意思で決める自決権を獲得することとしている。

 明治政府による地租改正によって北海道においても1881年頃から土地に対する私有財産権も整備されていくがアイヌの人々にとってそのような私権は馴染みのないものであった。乱獲による動物の減少を防ぐためとして伝統的な狩猟、漁撈も制限され生活も困窮していく。アイヌはアイヌ以外の国民を和人と呼ぶが、和人によって土地を奪われるアイヌもおり移住を余儀なくされるアイヌが多く出てきた。多数の屯田兵や農民が北海道に入植する中、明治政府はアイヌを日本国の平民とした。政府は1899年に北海道旧土人保護法を施行し、無償医療の提供、冬季生活資糧の給付、土地の無償下付や農具の給付など様々な救済措置を実施した。アイヌの人々は農業に馴染んでいなかったこともあり農業指導は施したものの定着するのに時間がかかった。アイヌの人たちの生活改善が遅れたことは事実であるが、政府がアイヌに対して不利な状況を押し付けたり、不平等な処遇を行うことは無かった。アイヌの人々を差別するというよりもむしろ法律を作って特別に保護していることから特別な配慮がなされていたと理解すべきだろう。アイヌは文字を持たないことからアイヌ語の継承は極めて厳しい状況にある。母語としてアイヌ語を話せる人はほとんどいない。抱合語として多少残っている程度である。アイヌの人口は不明の状態にある。2017年の北海道の調査では13000人とされているがアイヌである根拠が曖昧であるため人数の特定はできない。北海道アイヌ協会や東京ウタリ協会に申請すればそのままアイヌと認められるという話すらある。

 アイヌの先住民族としての権利運動は1950年代のアメリカでの先住民権利回復運動に影響されて始まった。政府は1995年、内閣官房長官の私的諮問機関としてウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会を設置した。同懇談会が翌1996年に官房長官に提出した報告書にはアイヌの人々の先住性について「少なくとも中世末期以降の歴史の中でみると、学問的にみても、アイヌの人々は当時の『和人』との関係において日本列島北部周辺、とりわけ我が国固有の領土である北海道に先住していたことは否定できないと考えられる」とした。更に、「アイヌの人々には民族としての帰属意識が脈々と流れており、民族的な誇りや尊厳のもとに個々人として、あるいは団体を構成し、アイヌ語や伝統文化の保持、継承、研究に努力している人々も多い状況にかんがみれば我が国におけるアイヌの人々は引き続き民族としての独自性を保っているとみるべきであり、近い将来においてもそれが失われると見通すことはできない」という認識を示した。1997年にアイヌ文化振興法施行によって北海道旧土人保護法は廃止されたがアイヌが先住民族であることは認定されなかった。2007年に国連総会で採択された先住民族の権利に関する国際連合宣言を踏まえて、2008年にアイヌを先住民族として認めることを政府に求める国会決議が衆参両院とも全会一致で可決された。2019年4月19日、アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律が成立したことで法制上アイヌの人々が北海道の先住民族であることが規定された。同法の規定には国有林野におけるアイヌにおける儀式の実施その他アイヌ文化の振興等に利用するための林産物の採取について共同使用権の取得に関する規定や内水面さけ採捕事業についての漁業法及び水産資源保護法上の許可の配慮規定などが設けられている。

 菅義偉政権下でアイヌが先住民族であることを法的に規定し、アイヌ施策に対して一気にアクセルが踏まれた。アイヌの文化や歴史に疑いを持つことは無いがアイヌを先住民族とすることで利権が生まれることには強く危惧する。そもそもアイヌ民族であるという認定をどうやってするのか。アイヌが先住民族として法的に優遇措置を受けるのであれば不正にアイヌの末裔になることはいくらでも可能なのかもしれない。北海道アイヌ協会がアイヌ民族であるかどうかの認定を行っているがその基準は曖昧である。アイヌの人々は日本政府の同化政策によってアイヌである証拠を奪われたというがそれは一方的な主張である。明治政府以来、アイヌに行ってきたことは日本人としての平等な近代化政策に加えてアイヌに対して保護的施策を特別に提供してきている。アイヌは国家の近代化と文明の発展の波に乗って北海道のみならず全国に居住することとなり、生活様式も和人に共有することでその恩恵を平等に享受してきたにのである。政府がアイヌの文化を奪ったなどという事実はない。アイヌをアイヌだと認定するにはDNA鑑定を行うしか手立てが無いように思われるがそのようなことは行われず北海道アイヌ協会による曖昧な認定が行われている。2019年以降、アイヌ関連の予算は一気に拡大した。アイヌ施策推進法では政策対象者の特定や認定が曖昧であることを度外視してアイヌの人々の生活への実質的な支援をも一定程度可能にしている。結婚や養子縁組などアイヌ民族ではない人がアイヌの認定を受けて不当に支援を得ることも不可能ではない。アイヌ政策推進交付金はアイヌが地域社会で豊かに暮らせるように支給される。自治体が1/2、国が1/2の割合で交付金を負担することが一般的であるが、アイヌ政策推進交付金に関しては自治体が1/10、国が9/10という負担割合となっている。それだけ国が重い責任を負うということである。そもそもアイヌに限定した政策は憲法に反するのではないだろうか。憲法第14条には「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定されている。アイヌへの特別優遇はアイヌ以外の国民に対する逆差別なのではないか。

 係るアイヌ政策検討市民会議はアイヌ施策推進法の改正を要求し、「自己決定権を堅持し、あらゆる先住権を認め、先住権を保障すべき」と主張している。植民地主義や同化政策を重く受け止め政府に謝罪と賠償を求めるにとどまらず、自己決定権などという自治権をも匂わす権利を与えよと要求している。そして、国家によるアイヌに対する謝罪や賠償が為されていないことがアイヌ差別を助長していると主張する。このような団体はもはやエセ同和と同類といって良いのではないか。アイヌの土地や資源、言葉や文化を政府が奪ったなどという事実はない。歴史認識を歪曲し国家に賠償を迫ることは、逆にアイヌ民族の誇りと尊厳を貶める行為である。かつて自民党の杉田水脈議員がアイヌ政策検討市民会議に関して「アイヌ文化振興事業に公金不正流用疑惑がある」と発言して取り沙汰されたことがあった。公金の不正流用に関する裏付けは私には取れなかったので真偽は不明であるが、アイヌ民族であることが曖昧に認定されることからアイヌ政策推進交付金を不正に得ることが可能な状況であることは確かだ。アイヌ政策検討市民会議が過剰なまでに杉田水脈議員の発言に反応し抗議する様からも疑惑は深まるばかりである。同会代表のジェフリー・ゲーマン氏はアイヌ施策推進法に罰則規定がないことが差別発言を生んでいるという。しかし、差別はアイヌに限ったことではない。アイヌに対する差別発言だけに罰則規定を設けることは他の差別と整合性を保てない。

 1976年には東アジア反日武装戦線を名乗る極左暴力主義者が北海道庁を爆破し職員2名が殉職、80名余りが重軽傷を負った。実行犯の大森勝久は「アイヌ、沖縄人民、チョソン人民、台湾人民、部落民、そしてアジアの人民に対する日帝の支配を打ち砕いていかなければならない。」という犯行声明を出している。少数民族の間違った歴史認識による反政府感情を極左活動家が利用しようとした事件である。民族の分断を利用して極左暴力集団にテロ行為を行う隙を与えてしまう危険性がある。

 なぜ菅政権が一気にアイヌ利権を後押ししたのか理解ができないが、民族共生象徴空間としてウポポイが開設されている。総建設費は約200億円、広告費は約38億円が国民の税金で費やされた。菅政権の目的は新たな観光資源の発掘としてアイヌに焦点をあてたということか。アイヌ利権とはアイヌ文化の振興を謳ったウポポイ利権のことかもしれない。北海道のいたるところにミニウポポイの開設計画が立てられている。アイヌ政策推進法はウポポイ利権というアイヌ利権を生み出した。走り出したアイヌ利権のゴールこそがアイヌ政策検討市民会議が求める自決権もしくは自治権なのかもしれない。ゴールがそうだとしたら北海道は日本から独立しアイヌ国になる可能性を秘めていることになる。

 アイヌをアイヌ民族と認め法規定する必要性が本当にあったのか。アイヌを認めると倭民族も熊襲民族も隼人民族も琉球民族も認める必要があるのではないか。日本が単一民族だとするとそれは何民族になるのか。混合民族とするしかないと思われる。混合民族として単一民族なのだとするとアイヌ民族だけ先住民族だと認めることは解釈が矛盾する。アイヌが先住民族であることを法的に規定したことは菅政権の暴走であったと思わざるを得ない。


参考

杉田水脈氏が謝罪したくなかった「アイヌ政策検討市民会議」とは 「政策全体を問うてきた。名指しに驚いた」 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/290003

杉田水脈氏、アイヌ事業関係者を「公金チューチュー」とやゆ 政務官辞任は「謝罪するのが嫌でやめた」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/289494

アイヌ政策検討市民会議 HP

https://ainupolicy.jimdofree.com/

アイヌ民族の補償問題 吉田邦彦

https://www.kansai-u.ac.jp/ILS/publication/asset/nomos/28/nomos28-02.pdf

北海道庁爆破事件 Wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%E5%BA%81%E7%88%86%E7%A0%B4%E4%BA%8B%E4%BB%B6

「地元の川でのサケ漁は先住権」アイヌ民族の訴えはなぜ退けられたか 世界で広がる先住民の権利保障、日本は不十分 JBPRESS

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/80608

アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律

https://www.ff-ainu.or.jp/web/overview/details/post_12.html

アイヌ Wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%8C

ブチ込んだ「ウポポイ」の虚実 文春

https://bunshun.jp/articles/-/40841?page=4

アイヌ施策推進法 常本照樹(北海道大学名誉教授)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jeas/47/0/47_168/_pdf

先住民族1の権利に関する国際連合宣言(仮訳)

https://www.un.org/esa/socdev/unpfii/documents/DRIPS_japanese.pdf

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