総合科学技術・イノベーション会議議員の国会同意人事について
懐疑的
総合科学技術・イノベーション会議議員の国会同意人事についてである。ちょうど1年前にも同会議の議員について調査したが、今回も新任2名、再任1名の同意人事案が提出されている。
本会議は内閣府に設置される重要政策に関する会議として総合的・基本的な科学技術・イノベーション政策の企画立案及び総合調整を行う役目を担っている。活動内容としては各省庁から諮問される企画に対して答申し、その内容を決定するという役割を担っている。会議では科学技術に関する基本的な政策、科学技術予算・人材の資源配分、国家的に重要な研究開発、イノベーション創出を促進するための環境整備、といった点について調査審議や評価を行う。本会議は経済財政諮問会議と並ぶ重要会議である。
現政権下で次期5年間の中期計画を策定することになるが生成AIや量子技術、バイオテクノロジー、経済安全保障との連携など課題は多い。そういえば4年ほど前に本委員会で山中教授のIPS細胞の研究費予算がゼロにされた後にすったもんだの末に予算が復活するという出来事に絡んだのを本委員会であったと記憶している。首相秘書官が美人官僚と出張時に繰り返しホテルのコネクティングルームに宿泊していたことが国会で話題となっていた。他人の情事にさほど関心はないが公費であるのだから不明瞭な使用は現に慎まなければならない。なにより、IPS細胞の研究は我が国の科学技術の発展に寄与するはずであるから予算ゼロにすることはありえない。
常勤の新任案である宮園浩平氏は理化学研究所の理事である。東京大学医学部医学科を卒業した後は分子病理学、分子腫瘍学の専門家として癌細胞に関する研究に携わっている。東京大学副学長も歴任している。医師として東大附属病院での勤務歴もある。TGF-βファミリーのシグナル伝達と血管・リンパ管新生の分子機構の研究を継続的に行っている。スウェーデンでの研究歴も有する。細胞内での信号伝達機構に関する研究で世界をリードする成果を挙げている。宮国氏の癌細胞シグナルの研究における第一人者であり、本会議に期待される科学技術イノベーションに貢献するに十分な見識を有しており、同氏の新任に賛成するべきだと考える。
非常勤の新任案である鈴木純氏は帝人シニアアドバイザー、出光興産社外取締役などに就いている。東京大学理学部を卒業し、イギリス帝人に3年間勤務後に大阪大学で医学博士を取得。帝人では医薬事業本部に従事し、代表取締役CEO、取締役会長を歴任。岸田内閣時にはAPECビジネス諮問委員会で日本委員を務めた。日本を代表する科学企業を率いてきたこと、政府の政策推進に明るいこと、ハルスケア分野、炭素素材分野で深い見識を持つことなどから稀に見る有能な人物であることは疑う余地がない。非常勤での就任は歓迎し賛成するべきだと考える。
非常勤の再任案である波多野睦子氏は東京科学大学(東京工業大学)理事・副学長である。慶応大工学部を卒業後、日立製作所入社、慶応大大学院で工学博士取得、カリフォルニア州立大バークレー校で研究員、日立中央研究所研究員を経て日本学術会議会員、東工大教授、リコー社会取締役を歴任、令和6年より東京科学大学理事に就任している。半導体や量子センサにおいて実績を残している。量子センサ、パワーデバイス、半導体物性を専門分野とする工学研究者である。産学双方を経験しているバランスをとれたキャリアを積んでいる。同氏の非常勤での再任には学術研究の振興を図る上でも有益と考えて賛成するべきである。
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