預金保険機構の理事長および理事、監事の同意人事案について
預金保険機構の理事長および理事、監事の同意人事案についてである。預金保険機構とはアメリカ合衆国における連邦預金保険公社(FDIC)をモデルに設立された預金者等の保護と信用秩序の維持を主な目的とする認可法人である。政府と日本銀行が半分ずつの割合で出資している。保証額は一人当たり1000万円を上限としている。保護の対象は銀行法に規定する銀行、長期信用銀行、信用金庫、信用協同組合、労働金庫、信金中央金庫、商工組合中央金庫などである。農林中央金庫、農業協同組合等は含まれず農水産業協同組合貯金保険機構によって保護される。郵便貯金のうち郵政管理・支援機構が承継した定期性郵便貯金については政府保証が継続する。政府系金融機関や外国銀行の日本支店は対象外となる。保険以外の業務は破綻が起きた際に迅速に対応出来るようにする為の取り組み、破綻時の処理、破綻処理後の回収・責任追及、健全状態の金融機関に対する資金補強などがある。昨今では振り込め詐欺が急増したことを受けて振り込め詐欺救済法が施行され、預金保険機構は金融機関が犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があると認める口座についての公告の求め(4条1項)があったときは、その口座の金融機関、支店、種別、及び口座番号、名義人名並びに権利行使届出期間を公告する。公告期間が過ぎるとその口座の預金債権は消滅し預金保険機構はその旨を公告する。消滅した口座の資金を利用してその口座による振り込め詐欺の被害者の被害回復を図るために金融機関は分配金を支払う、という取り組みも行っている。
破綻した銀行で預金保険機構が金融整理管財人に選任された金融機関はこれまでに8銀行、2信用金庫、2信用組合である。東京相和銀行が東京スター銀行、なみはや銀行が大和銀行、日本振興銀行がイオン銀行に継承されたほか9銀行の継承先選定を行ってきている。資金援助等は累計として金銭贈与190,319億円、資産買取64,210億円、貸付80億円債務引受40億円を実施している。
さて、人事案であるが、常勤の理事長と常勤の理事2名、非常勤の監事1名の人事案である。常勤の理事長は三井秀範氏の二期目の再任案である。東京大学を卒業後、外務省に入省。米スタンフォード大留学後、金融庁にて検査局長、企画市場局長を歴任。弁護士でもある。金融庁退職後は東京大学大学院法学政治学研究科教授を務めた。預金保険法改正に携わるなど金融危機や資本増強に対応する実務を経験している。立法と実務の両方を経験し、法逐条解説の執筆者でもある。三井氏の理事長再任は実績を鑑みても妥当だと考える。
常勤の理事の再任案である正願隆一氏は一橋大経卒で日本銀行に入行し、システム情報局長、決済機構局長を経て日本アイ・ビー・エム特別顧問に就いた。預金保険機構に出向経験もあり日本興業銀行の破綻処理に携わったこともある。預金保険機構理事就任後は金融再生部、預金保険部、システム統括部の担当理事を担っている。三期目の再任案ではあるが、任期が2年であること、業務における指導的役割を果たしていることから正願氏の再任案には賛成するべきだと考える。
常勤の理事の新任案である山﨑英司氏は京大法を卒業後、検事として各地の検察庁に勤務、奈良地方検察庁次席検事、大阪高等検察庁公安部長を歴任している。預金保険機構の子会社に整理回収機構がある。整理回収機構では破綻金融機関の経営者の民事・刑事の責任追及も行っていることから山﨑氏の経験を活かす場面があるかもしれない。山﨑氏は長年にわたり経済事案に携わってきてことから高度な専門知識を有している。業務の関連性がないわけではないので山﨑氏の常勤理事任命の人事案には賛成するべきだと考える。
非常勤の監事の人事案である大谷益世氏は明治大政経卒の公認会計士である。京橋監査法人、明翔監査法人(現東和監査法人)に所属。文科省契約監視委員会委員、千葉県行政改革委員会委員、八千代市監査委員を歴任。民間企業のみならず自治体の監査に携わった経験を持つ。他の理事と比較すると経歴的には大いに見劣りするものの非常勤の監事としての人事案であることから大谷氏の実務経験は申し分のない実績だと認めて賛成するべきだと考える。
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