日本銀行政策委員会委員の審議委員の同意人事について
日本銀行政策委員会委員の審議委員の同意人事についてである。政策委員会は通貨及び金融の調節に関する方針を決定するほか、その他の業務の執行の基本方針を定め、役員の職務の執行を監督する権限も有している。日本銀行には、役員として、総裁、副総裁(2名)、審議委員(6名)、監事(3名以内)、理事(6名以内)、参与(若干名)が置かれている。このうち、総裁、副総裁および審議委員が、政策委員会を構成している。政策委員会は戦後、GHQによって民主化の一環として設置された。任期は5年、9名全員が常勤で報酬は2600万円と高い。金融政策に関する事項を決定する金融政策決定会合は年8回、通常会合は週2回行われる。
黒田総裁時代に行った非伝統的金融政策いわゆる異次元の金融緩和路線が植田総裁の就任以降は見直されたことによりゼロ金利政策とYCCは解除されて相次いで長期金利は上昇している。これは特例公債法が切れることと財務省が目標としてきたPB黒字化の達成の目途が立っていることが引き金となっている。PB黒字化以降の新たな緊縮政策の題目として財務省は財政収支の黒字化を唱えている。これは国債の利払いを含んでいることから、国債の金利が上がっていくぞ、という恐怖を政治家に植え付けようとしている。財務省は過剰な金利上昇を想定した上で試算し、3年後には利払いが1.6倍に達すると威嚇する。財務省のこうした緊縮政策の強化の裏付けにされているのが春闘での5%程度の賃上げの達成である。この1月にも更なる利上げを日銀政策会合で決定された。その裏で2月には実質経済成長率がマイナスに転じること予想されている。つまり、日銀は2月の日本経済のマイナス成長が表沙汰になる前に駆け込みで利上げに踏み切ったことになる。
日銀の政策金利が0.25%から0.5%に引き上げられたことで住宅ローンの返済は平均例で月8000円上昇することを日経新聞が報じている。年間にすると9.6万円の負担増となる。国民民主党の唱える基礎控除と給与控除を178万円に引き上げても減税額は約13万円である。日銀増税によって減税分の多くは相殺されてしまうことになる。政治家が、国民が富を得て幸福に繋げる、ために減税を唱えて国民の支持を得たとすれば財務省は黙ってはいない。本気を出してなりふり構わず増税する。106万円壁の撤廃、ガソリン補助金の中止、防衛特別法人税、防衛特別所得税、たばこ増税、介護保険料負担増、後期高齢者医療保険の負担増、教育資金一括贈与廃止、結婚・子育て資金の贈与特例廃止、厚生年金支給減額、ケアプランの有料化など枚挙に暇がない。国民民主党の衆院選での圧勝が財務省に火を着けた。基礎控除の拡大どころではない数倍返しの反撃を財務省はしてくる。悲しいかな、減税を謳うと大増税だけではなく、利上げや為替にも影響してくることがわかった。ここで国民民主党が中途半端な妥結をしてしまうと国民にとっては不利益だけが残ってしまう。それだけは勘弁願いたいものだ。日本にも米国のトランプ大統領のように極端なポピュリストが必要なのかもしれない。田中角栄氏や小泉純一郎氏を上回る国民を扇動できるカリスマが登場しない限り日本の財政政策や経済政策は大転換できないだろう。かつての大国日本の迷走と低迷に終止符を打つゲームチェンジャーが現れること切に願う。
さて、数少ないリフレ派である安達誠司氏が3月で退任する。安達氏が退任することでリフレ派は野口旭氏ただ一人となる。政府や財務省の意向を忖度してか、マネーサプライは絞られる方向にある。常勤の審議委員の新任案である小枝淳子氏が緊縮財政派であるかどうかは定かではないがリフレ派ではないことは間違いない。小枝氏は早稲田大学政治経済学術院教授であるが、かつては財務省財務総合政策研究所主任研究員であった。小枝氏は日経新聞への寄稿の中で日銀の大規模緩和からの脱却を歴史的ステップだと評価している。金利上昇による実体経済への影響を今後の政策に反映できるかどうか不安を抱く人選である。退任する安達氏はリフレ派ではあったものの直近では利上げに賛成しており思想転換が言われていた。代わって起用される小枝氏が利上げ推進の理論強化に繋がる可能性が高い。小枝氏も「金利上昇が経済の縮小に必ずしもつながるとは限らない」と発言している。ジェンダーバランスを考慮し、利上げ推進を決定した金融政策の理論強化を図る人事案だとすれば同意するべきではない。現段階において通貨は回収すべきではなく、積極的に供給し経済を膨らませる必要があると考える。よって、小枝淳子氏の同意案に賛成するべきではないと考える。
参考
日本銀行について 日本銀行HP
https://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/index.htm
日銀利上げ、住宅ローン返済は平均例で月8000円増 日経
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB207RX0Q5A120C2000000/
日銀審議委員に小枝早大教授、政策正常化を支持の可能性-政府提示 ブルームバーグ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-28/SQONWUT1UM0W00
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