中央社会保険医療協議会共益委員の国会同意人事について

 中央社会保険医療協議会共益委員の国会同意人事についてである。昨年の同時期にもレポートをした。中央社会保険医療協議会(中医協)は医療保険の診療報酬の改定および療養担当規則の改定に関して厚生労働大臣の諮問を受けて審議や答申するほか自ら建議することを任務とする厚生労働大臣の諮問機関である。協議会の委員は健康保険を代表する委員が7名、医師を代表する委員が7名、公益を代表する委員が6名となっており、総勢20名で構成されており全員が非常勤である。

 国民、患者の元に薬が届きにくい状況が4年間継続している。供給不安は日常的な治療

薬から手術等に用いる薬剤、慢性疾患薬まで多岐にわたり、適時適切に医薬品にアクセス

出来ず、国民の命と生活が脅かされる事態に直面しているとして野党は中間年薬価改定の廃止を求める政府への申し入れを行っている。不適切な価格交渉が拡大し、個々の医薬品の価値を損なう過度な値引きが常態化している。適正な市場実勢価格に基づく薬価改定が機能不全に陥っている。毎年薬価改定が行われ、医薬品の産業基盤が過度な価格引き下げによって揺らいでいる。国が公定価格と実売価格の差を縮めるために薬価引き下げを行ってきた結果、不採算もしくは採算性の悪い医薬品の生産が減少し薬不足が蔓延する結果となった。また、昨今の原材料の高騰もあり医薬品会社の体力も弱まっていることが危惧されている。

 中医協は令和7年も薬価改定に向けて検討を続けている。医薬品業界からの「中間年薬価改定は安定供給確保に逆行する」とした意見陳述がされた。これに対し中医協委員からは「2024年度改定で手当てされたイノベーション評価・安定供給確保の効果、つまり業界の取り組み状況を明らかにすべきである」と指摘している。薬価改正においては実売価格との乖離が大きいものについては依然としてギャップ解消を図る方針であるが、同時に原材料の高騰や不採算の薬品に関しては薬価引上げを行っている。中医協による取り組みよって公定価格と実売価格の差を5.2%にまで縮めた功績は大きい。中間年改定の廃止論は政治に一任し中医協は医薬品不足の解消する為の施策も念頭に置いて薬価改定に取り組んで欲しい。

 非常勤委員の再任案である笠木映里氏は東京大学法学部を卒業後、社会保障法や公的医療保険分野の専門家として九州大学大学院准教授、東京大学大学院教授を歴任してきた。フランスの医療制度についても詳しい。委員としては再任であって未だ44歳という若さは異例であろう。委員任命後は保険医療材料専門部会長としての役割を担ってきた。厚労省関係の審議会や有識者会議には複数委員として任命されており厚労省の御用学者である。されど社会保障のエキスパートであることと非常勤での起用であることから笠木映里氏の同意人事案には賛成することが妥当だと考える。

 非常勤の委員の新任案である城山英明氏は東京大学法学部卒業後、MIT研究員、パリ政治学院教授、東京大学大学院公共政策学連携研究部教授、未来ビジョン研究センター教授を歴任。消費者庁、総務省、内閣府などの委員会委員を多数務めている。各省庁の政策形成の強化目的での起用が多かったものと推察する。されど中医協に関しては非常勤委員での任命であることから城山英明氏の同意人事案には賛成することが望ましいと考える。


参考

医薬品のイノベーション評価・安定供給に逆行しないよう、2025年度に薬価の中間年改定(=薬価引き下げ)は中止をと医薬品業界—中医協

https://gemmed.ghc-j.com/?p=64240

立民、国民民主が薬価制度法案を提出 毎年改定を廃止に 日経

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA206QW0Q4A221C2000000/

医薬品市場価格、公定価格を5%下回る 引き下げ視野に薬価改定議論 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASSD41V8CSD4UTFL008M.html

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