NHK決算の事後承認(R2・R3)について

事後報告?事誤報告? 

 NHKの決算の承認についてである。最初に言っておこう。国会でのNHK決算の承認なんてものは儀式みたいなもので議論も検討もない。承認が必要だと決められているからしょうがなくやっているだけで実に形式的である。仮に承認しなかったからといってどうなるものぞ、「あっ、そう」でおしまい。当事者もほとんど議員も何とも思っていないというのが現実。

 そうであっても手を抜かないのが浜田聡議員。NHKから国民を守る党の議員であるから当然と言えば当然である。もう終わった過去のことだからと放置されがちな事後承認であっても一応こうして調査する。

 ちなみに「放送法第七十条第二項の規定」による承認はつつがなく毎年常会にて承認を得ている。放送法第七十条第二項とは「総務大臣が前項の収支予算、事業計画及び資金計画を受理したときは、これを検討して意見を付すとともに同項の中期経営計画を添え、内閣を経て国会に提出し、その承認を受けなければならない」というもの。第三項では国会がNHKから意見を聴取できるという規定、第四項は受信料の金額は国会の承認を得て決まるという規定。今回、調査する決算に関する規定は放送法第七十四条に「協会は、毎事業年度の財産目録、貸借対照表、損益計算書その他総務省令で定める書類及びこれらに関する説明書を作成し、これらに監査委員会及び会計監査人の意見書を添え、当該事業年度経過後三箇月以内に、総務大臣に提出しなければならない。」とあり第3項に「内閣は、前項の書類を会計検査院の検査を経て国会に提出しなければならない。」と規定されていることに基づく。条文を隅々確認してみたが国会に提出する規定があるだけで決算について承認を得る義務は規定されていない。閲覧できるようにさえしておけば良いということである。確かに後から何かを指摘したところで過去に遡って是正することは不可能である。国会で採っている採択自体が必要に迫られたものでないようだ。せっかく提出しているのだから何も反応しないのは不自然だし、なんとなく「確認しました」という足跡を残す為に採決を採っているような、そんなレベルの儀式であろう。計画だけはきっちりと承認を得る必要性を法規定しておきながらその後の決算などの事後報告をしないとなると事前の事業計画に関する承認に対して無責任であるしバランスが良くないから事後報告を義務付けただけなのかもしれない。形骸化するべくして形骸化している。

 前回、採決が採られたのは令和4年の臨時国会である。平成30年決算と令和元年の決算について異議なしが多数の採決であった。NHKの中期事業計画が3年毎であるから決算の事後承認も3年ごとに行っているのかもしれない。ならばそれを法制化しさえすれば違和感はなくなるのだが。仮に今国会か今年の臨時国会で採決があるとすれば令和2年と令和3年についてであろうから決算の中身を確認しておく。詳細を確認するには膨大な情報量になるので法の規定通り財務報告書から読み取れる範囲で確認する。とはいうものの財務報告も各年100ページ以上なので容易ではないのだが。

 令和2年についてであるが、事業収入7121億7423万円に対し、事業支出6870億1587万1千円となった。事業収入から事業支出を差し引いた事業収支差金は251億5835万9千円であり留保し翌年に繰り越した。決算書内では「財政安定化のための繰越金」などという独特の名目をつけているが繰り越した利益のことで延べ1590億円となっている。問題視されていたNHK委託業者や地域スタッフによる契約・未収対策に係る費用であるが約411億円を計上している。約468億円の予算から57億円減少しているのは新型コロナ感染症の感染拡大が本格化したことによる。訪問活動は5月末には停止している。その影響もあり令和2年の受信料は前年より約226億円の減少となっている。令和2年の後半はコロナ禍での自粛によって委託業者も地域スタッフも訪問活動ができない状況が続いた。契約件数は約88万件の減少。受信料未払いの契約者に対する簡易裁判所への支払督促の申立てについては令和元年は627件、強制執行は174件、放送受信契約の締結と受信料の支払いを求める民事訴訟は60件であったが令和2年は受信料未払いの契約者に対する簡易裁判所への支払督促の申立ては65件、強制執行は0件、受信契約未締結者に対し放送受信契約の締結と受信料の支払いを求める民事訴訟は11件になるなど数が急激に減少している。職員数は令和元年が10165人、令和2年が10175人でありほぼ横ばい。減らすと言いながら決して減らさない。これは予算主義の弊害の最たるもので事前に人件費を減らさないで済むだけで金額を確保していることから人員削減を迫られている意識は芽生えない。業務の効率化や生産性の向上、DX化などに対応してもしなくてもNHKの場合は改善には向かわない。自分たちの待遇改善なら真っ先に取り掛かるはずなのに。

 令和2年の決算の結論は不承とするべき。コロナによる受信料収入の減少額と契約・未収対策に価格費用の減少額のバランスが悪すぎる。さらに職員数が多すぎること、コロナ禍でも支出がほとんど減っていないことなどが問題点。純資産は8千億円以上ある。建設費をたてに剰余金を積み過ぎることは認めるべきではない。受信料の取り過ぎであることを指摘されて当然だと考える。

 次に令和3年の決算についてである。令和3年度収支決算の事業収入7009億3761万5千円に対し、事業支出6609億361万4千円となった。事業収入から事業支出を差し引いた事業収支差金は400億3400万1千円である。収入は減ったが支出はそれ以上に減った。令和3年はほぼ年中コロナ禍にあり日本経済が停滞していた。NHKはラッキーなことに受信料と言う特殊な国民負担に支えられていることもあり安泰。安泰どころか同業他社など他の民間企業が壊滅的打撃を受けている状況を尻目にNHKだけは収益を伸ばしている。放送法によって収益が保証されているに等しいNHKの事業スキームは強固すぎる既得権益だと言える。

 さて、収益を伸ばす要因となったのが地域スタッフ・法人等への手数料、契約・未収対策に要する経費等である。前年決算では約411億円であったが令和3年には約321億円となり約90億円減少している。コロナ禍においての訪問活動は困難であり相当する経費が不要となった。令和2年から令和3年にかけて減少した受信料は173億円であることからこれまでNHKが行ってきた委託会社や地域スタッフによる訪問活動の費用と成果はバランスが取れていない。173億円を売り上げるのに90億円もかけていては事業は成り立たない。よって翌年には委託会社による訪問活動による営業を全廃する方針をNHKは決めた。新型コロナ感染症の蔓延による怪我の功名といえるのかもしれないが、NHKはその程度のことに気が付くまで20年以上も経過しているのだから情けない。特殊法人と言う中途半端な存在が市場の競争原理から遠ざけ経営意識を低下させている。

 受信料未払いの契約者に対する簡易裁判所への支払督促の申立ては191 件、強制執行は119件、受信契約未締結者に対し放送受信契約の締結と受信料の支払いを求める民事訴訟を93件提起している。職員数は10175名、当初130名を削減したが期末には130名を増員し結局プラスマイナスゼロである。NHKは何があろうと確保済みの予算があるから職員は減らさない。減ったとしても関連会社や子会社に移すだけで身を切る行為は行わない。なぜ特殊法人が子会社を作ったり関連会社を作るのか、取り過ぎた受信料を隠すためではないのか。本体から外注する場合は入札とすることが良いが、その入札に子会社が加わることはあるのか、ないなら随意契約で公明性を失う。ちなみにこの年に無観客で実施された東京オリンピック・パラリンピックの関連経費は157億円となっている。その前の北京オリンピック・パラリンピック関連経費が27億円、冬季の夏季とは経費が異なることは理解するが放映権が高騰しているのも事実。オリンピックの放映権の市場価格は民放でなければ算定できない。NHKは既に4大会先までIOCと契約済みのようだが民放主導でNHKもJCに参加する方式にすればもう少しコストダウンが図れたのではないか。

 令和3年度の決算は不承とすべきだと考える。なぜか4000億円以上の金融資産を保有していることと、収益を還元せずに繰り越すこと、営業に関して訪問活動を中止しても未だに321億円もかかってしまっていること、職員の平均給与が約1300万円に上り他の公務員とは比較にならないくらい高額であることなどから認めるべきではない。大いなる改善と改革が必要であることは明らかである。


参考

財務諸表 令和3年

https://www.nhk.or.jp/info/pr/kessan/assets/pdf/2021/t-zaimu_r03.pdf

財務諸表 令和2年

https://www.nhk.or.jp/info/pr/kessan/assets/pdf/2020/t-zaimu_r02.pdf

財務諸表 令和元年

https://www.nhk.or.jp/info/pr/kessan/assets/pdf/2019/t-zaimu_r01.pdf

経営に関する情報 NHK

https://www.nhk.or.jp/info/pr/kessan/

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