公益認定等委員会委員の国会同意人事について
公益異邦人
公益認定等委員会委員の国会同意人事についてである。公益認定等委員会とは内閣府の審議会等で公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律に基づいて国またはその省庁所管とする公益法人の公益認定等を行う機関である。公益認定等について内閣総理大臣の諮問を受けて審議し答申を行う。併せて内閣総理大臣から委任を受けて公益法人等の監督も行う。公益法人等に対し報告を求め、公益法人の事務所への立入検査などを実施する。会議は年間26回ほど。公益法人の新規認定と変更の認定などが議題となる。活動について調べようと議事を見たが具体的内容となる議事録は非公開であった。
公益法人とは公益認定をうけた一般社団法人と一般財団法人を言う。通常の一般社団法人や一般財団法人のうち、法人税法上の非営利型法人の要件を満たす法人は収益事業課税、それ以外の法人は全所得課税であるのに対して、公益法人は収益事業課税で、尚かつ外形的に収益事業に該当していても公益目的事業として認定されたものは収益事業から除外され非課税となる。寄附者については、公益法人が公益目的事業に対して受けた寄附については、寄附を行った個人や法人には税制上の優遇措置が講じられる。また、みなし寄附金と呼ばれる、その公益法人内部で収益事業等の利益の100%まで非課税の公益目的事業へ寄附をする処理ができる。これに対して、通常の一般社団法人や一般財団法人にはみなし寄附は認められず、また寄附を行う個人や法人への税制優遇措置もない。公益法人になる利点は多数あるが認定の条件はいくつかあり主たる目的とする公益目的事業の費用の比率が50%以上であることが前提となる。公益法人の公益目的事業の定義は学術、技芸、慈善その他の公益に関する指定された23種の事業のであり不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものでなければならない。認定を得るには一定のハードルが存在するがその分メリットも多い。
さて、非常勤の新任案である清水新一郎は慶応大学経済学部を卒業後日本航空に入社。客室企画部長、常務、専務を経て代表取締役副社長に就任。現在は副会長に就いている。日本航空ラグビー部顧問。ボードメンバー歴が長く調整能力には長けていると思われる。経済同友会にも所属し人望も厚く人脈も広い。清水新一郎氏は常勤の兼職もなく非常勤委員の新任案であることから賛成するべきだと考える。
常勤の再任案である生野考司氏は東京大学法学部を卒業後、判事となり、札幌地裁部統括、東京地裁部統括、国税不服審判所長、広島高裁部統括、さいたま家裁所長を経て本委員会の常勤委員についている。裁判官としてのキャリアは豊富である。租税行政事件の裁判経験も多い。裁判官であったことが正義感の強い人ということにはならないが、法的な判断基準が一定している人物であることは確かだと考える。現在67歳で二期目3年の再任案であるが中心的役割を担い最後のご奉公として頂きたい。よって、生野考司氏の常勤での再任案には賛成するべきだと考える。
常勤の再任案である黒田かをり氏は成蹊大文学部卒業後、ハーバード大院修了、コロンビア大院日本経済経営研究所、アジア財団日本事務所に勤務した。気になるのがCSOネットワークとの関わりである。黒田氏はCSOネットワークの理事長や事務局長を歴任し現在は顧問である。このCSOネットワークの活動がはっきりしない。使命も理念も活動内容も報告もそのほとんどが抽象的で具体性に欠ける。耳障りの良い言葉を選んでSDGSの推進を図っているのか、サスティナビリティ、ステークホルダー、エンゲージメント、オーダーメイドなどと良い雰囲気を出す曖昧な言葉を並べて大企業からの寄付を集め公的な財政支援も窺うような団体のような気もする。なにより、ちらほらと人権という単語を目立たないように隅っこに配置する。これは浜田議員が紹介していたダウンタウンの豆のコントの内容を明るく華やかに演出したもののような印象を受ける。それもそのはず、黒田かをり氏の主たる著作は「SDGSと人権、Q&A」であり、その発行は部落解放同盟系の解放出版社である。私の穿った懸念である可能性が高いが黒田かをり氏の常勤での再任案には反対するべきだと考える。これを差別だと糾弾するのなら糾弾する側の差別意識こそが問題なのである。黒田氏が公益法人の認定に関わることに一抹の不安を感じたに過ぎない、ましてや三期目なんて。さて、黒田氏の再任に反対できる勇気ある議員が何人いるだろうか。
常勤の再任案である湯浅信好氏は慶応大学経済学部卒業の公認会計士である。みすず監査法人の代表社員の後、新日本監査法人の代表社員に就いている。長年の経験から会計制度全般に対する見識は深い。令和4年に退任した同じく公認会計士の小森幹夫氏(委員長代理)の後任として選任されたのが湯浅氏であるが、小森氏と湯浅氏は同じ監査法人の代表社員同士であり、湯浅氏は一年目から小森氏が就いていた委員会のナンバー2である委員長代理となっている。常勤委員のポストを私物化まではしないまでも仲間内で回す行為は公平性と公明性に欠くのではないだろうか。公益認定を行う委員会人事としては聊か訝しく感じられる。常勤での人事案であることから湯浅信好氏の任命には反対するべきだと考える。
非常勤の新任案である原田大樹氏は九州大学大学院法学専攻博士課程を修了した後、九州大学に勤め、その後、京都大学大学院法学研究科教授となり現在に至る。専門は行政法。研究者としての圧倒的な調査力が特徴。各国の行政に態様について具に調査している。学位論文である「自主規制の公法学的研究」では自主規制について日本、ドイツ、アメリカにおけるさまざまな法分野の100以上の具体例を収集し、問題状況とコントロール手法のさまざまな試みを検討している。最新の論文は「行政法学からみた立法管轄権論」である。法務省の司法試験考査委員を務めていた。内閣府の消費者委員会委員を兼務予定である。原田氏は47歳と若いが研究論文はずば抜けて多く調査料も莫大。バイタリティ溢れる将来が期待される研究者である。非常勤での新任案である原田大樹氏の同意人事案には将来の期待を込めて賛成するべきだと考える。
非常勤の新任案である北村聡子氏は国際基督教大学卒の弁護士である。現在は半蔵門総合法律事務所の代表社員である。現在は第一東京弁護士会副会長である。半蔵門総合法律事務所に所属する弁護士は公職にある者か公職経験者がやたらと多いような気がする。この事務所に所属すると公職に就けるのか、公職に就いた者がこの事務所に集まってくるのかはわからないが準大手の法律事務所と言えど半分近い弁護士が公職経験者である。だからと言って北村氏の任命に反対するわけではないが、ポストをこの事務所が世襲するような私物化には至らないように注意深く観察する必要があると思われる。北村氏は過去には最高裁判所司法研修所民事弁護教官を務めている。現在はヤクルト本社社外監査役とJA共済監事に就任している。経営とは隔して会計を俯瞰できる能力を備えていると察することから北村聡子氏を非常勤で新任する同意人事案には賛成するべきだと考える。
非常勤での新任案である石津寿恵氏は早稲田大学第二文学部を卒業後、明治大学大学院経営研究科博士課程を修了した。北星学園大学を経て明治大学経営学部教授となり、現在は明治大学副学長である。専門は会計学。神奈川県公益認定等審議会,審議会委員や会計検査院情報公開・個人情報保護審査会委員、中央社会保険医療協議会など多くの公職を経験している。独立行政法人やNPOの会計にも詳しい。著書に「非営利組織会計の基礎知識」や「地方公共団体の公会計制度改革」などがある。医療法人や医療福祉事業に関わる会計や情報開示も詳しい。石津寿恵氏が公益法人認定に係る検討に一定の役割を果たすために十分すぎる見識を持つことから非常勤での新任案には賛成するべきだと考える。
参考
公益認定等委員会 HP
https://www.koeki-info.go.jp/commission/index.html
公益事業支援協会 上申書
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