裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について

もう、うる裁判。

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案についてである。裁判所の職員の数は裁判所が巨大組織であるから故に毎年変動することは当然のことでやむを得ない。裁判所職員定員法は日本国憲法発布の際にほぼ同時期に施行された法律である。新規訴訟の受理数や退職者数などを勘案して毎年法改正を実施し定員数を更新している。本年は定員を47名削減する法案である。昨年は裁判官以外の職員を31名削減された結果、現状の定員は裁判官が3826人、一般職が21713人となり合計25539人が裁判所職員の定員となっている。ちなみに国家公務員は約58.7万人、地方公務員は約274万人いる。裁判所職員は国家公務員の一部となる。裁判所事務官は国家公務員と同待遇の国家公務員特別職に当たる。そのため給料も国家公務員並みの高水準となっているほか扶養手当・住居手当・通勤手当・超過勤務手当など各種手当も充実している。初任給は総合職(院卒者)26万8920円、総合職(大卒)24万0840円、一般職(大卒)23万5440円、一般職(高卒者)19万9920円である。人事院の令和6年度国家公務員給与等実態調査によると裁判所一般職の平均給与月額は405378円、俸給は323823円、平均年収は約6688737円である。給与以外に国家公務員と同等の福利厚生が与えられる。平均年齢42.3歳、平均勤務年数20.3年である。

 裁判所職員になる為には裁判所が独自に実施する「裁判所職員採用試験」を受験・合格しなければなりません。試験には総合職(院卒者)、総合職(大卒程度)、一般職(大卒程度)、一般職(高卒者)の4種類があり、受験資格を得るために満たさなくてはいけない要件や試験内容はそれぞれ異なる。試験内容は国家公務員試験に類似している。総合職は1次試験で基礎能力試験と専門試験があり、憲法、民放、選択から各10問が出題される。2次試験は小論文と記述式専門試験、政策論文試験、人物試験が科される。3次試験ではグループディスカッションと個別面接が行われる。一般職は2次試験の政策論文と3次試験がない。総合職も一般職も比較的難関であると言える。令和6年度は院卒総合職は受験者70名で合格者3名、大卒総合職は受験者560名、合格者17名、大卒一般職は受験者10945名で合格者1979名であった。

 裁判所の職員になるメリットは仕事の専門性が高いこと。将来、司法書士や行政書士などキャリアップにも繋げれる可能性がある。また、公務員であることから残業時間が少ないこと、福利厚生がしっかりしていることもメリットと言えよう。裁判所に採用されると事務官や書記官や調査官などの職種に分かれる。裁判所事務官は裁判部では書記官のもと裁判事務に従事したり、事務局では総務課、人事課、会計課等の事務全般に従事する。裁判所書記官は裁判所法第60条の権限に基づき法廷立会、調書作成等を行う。また、法令や判例を調査したり、弁護士、検察官、訴訟当事者等と打合せを行うなどして裁判の円滑な進行を確保する。家庭裁判所では、法律的な解決を図るだけでなく、事件の背後にある人間関係や環境を考慮した解決が求められる。家庭裁判所調査官は事件当時者の意向や心情などについて調査を行ったり、非行を起こした少年やその保護者と面接し、非行に至った経緯や動機、少年の性格や行動傾向、生育歴、生活環境などについて調査を行う。調査員だけはなぜか多忙。

 裁判官の採用は当然司法試験に合格し1年間の司法修習を終えた者から任官される。司法試験は誰でも受験できるというものでない。予備試験に合格するか法科大学院を修了する必要がある。予備試験の合格率は4%ほどであり難関であることから法科大学院に進む者が多い。司法試験合格者は司法修習を経て卒業試験に合格することで法曹資格が与えられる。裁判官に任官される者は卒業試験に合格した約1500名の中から100名にも満たない一握りの優秀者である。残業代は支給されないが年収は高額である。20代半ばで約500万円、30代半ばで約800万円、40代半ばで約1800万円となり、それが定年まで続く。高等裁判所、最高裁判所の判事にまでなると2500万円以上となる。裁判官には手厚い報酬と身分が保証されている。

 裁判所にはその他、執行官、調停官、民事調停委員、家事調停委員、司法委員、参与員、鑑定委員、専門委員、精神保健審判員、精神保健参与員、労働審判員などに選任された者がいる。委員には公認会計士、税理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、弁護士、医師、団体役員等から多く任命されている。また、裁判員裁判対象事件について裁判官とともに法廷での審理に立ち会い、評議で意見を述べ、判決の宣告に立ち会う裁判員は4714人が任命されている。

 さて、本記事の主題である裁判所の人数であるが、当該法が制定された昭和26年においての職員数は22758名であったが令和6年には25539名である。約10%の増加となっている。一方、裁判所の新受全事件数は昭和27年には約266万件であったが令和5年には約357万件となっている。約34%増加している。単純にこれらを考慮して検討すると職員の増加は比較的抑えられているように思われがち。しかしながら仕事環境も大いに変化しており社会全体でDX化は進められている。裁判所においても労働効率の向上に努める必要がある。IT化も進め仕事量的にも生産性を上げる取り組みを進めるとともにDX化を推進して仕事の質的な変革を行わなければならない。社会潮流を鑑みても今後は一般職の職員が減少に転じることが予想されることから裁判所も例外ではない。たった47名の削減では現状維持と言って良い状況である。巷によくある公務員が多すぎる、公務員の給料も高すぎる、などというやっかみもどきの発想の延長上で裁判所職員の人員削減を唱えているのではない。思い切った削減をしないとDX化は進まない。行政が率先してDX化を進めないと社会のDX化は進まない。行政がDX化を強力に推し進めることが人員削減に繋がったとすれば社会のそれに連なって生産人口の減少をDXをはじめとした効率化や合理化でカバーしようという潮流が築かれるという波及効果が生まれるのでないだろうか。行政が社会をけん引するほどのDX化を進めて頂きたい。その役割に裁判所は適していると考える。

*裁判所こそAIの活用できる場面が多いのではないか。革新的な技術を裁判もどんどんと導入するべきではないか。少なくとも争点の整理ぐらいは人間よりAIの方が正確であると考えられるがどうか。

*職員の人数を維持し続けると効率や生産性が向上しない要因となることから思い切った人員削減を行なえばDX化なども必要に迫まれ一気に進むのではないか。


参考

裁判所職員定員法 Wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80%E8%81%B7%E5%93%A1%E5%AE%9A%E5%93%A1%E6%B3%95

裁判所一般職の平均年収と年代別推移を紹介・職種の魅力も解説アガルートアカデミー

https://www.agaroot.jp/komuin/column/saibansyoippansyoku-annual-income/

裁判所の職員 定員 法務省

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2024/databook2024/db2024_102.pdf

公務員の種類と数 内閣官房

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/r02_komuin_shuruikazu.pdf

裁判所職員の定員の推移表 山中理司

https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2018/12/%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80%E8%81%B7%E5%93%A1%E3%81%AE%E5%AE%9A%E5%93%A1%E3%81%AE%E6%8E%A8%E7%A7%BB%E8%A1%A8%EF%BC%88%E6%98%AD%E5%92%8C%EF%BC%92%EF%BC%96%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%81%8B%E3%82%89%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%93%EF%BC%90%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%81%BE%E3%81%A7%EF%BC%89.pdf

事件数 裁判所データブック

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2024/databook2024/db2024_211.pdf

裁判所データブック2024 裁判所

https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/databook/index.html

裁判所事務官の気になる?年収・給料・収入 進学ネット

https://shingakunet.com/bunnya/w0001/x0020/nenshu/

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