委員会および憲法審査会の参考人の出席について

周恩らいん。

 委員会および憲法審査会の参考人の出席についてオンラインによる出席を認める改正案についてである。今回、国会に提出されているのは参議院規則第186条2項中の「出席」の下に「情報通信技術を利用する方法による出席を含むものとする」という26字を加筆するだけの改正法案である。ちなみにこれは議員立法。理由はより多様な方の意見を聴けるようになることと委員会の調査や審査を一層充実させるためとしている。当該改正案は参議院規則についてであるが衆議院規則については既に昨年の6月に同様の内容に改正されている。

 この改正によって育児や介護で国会に来れない人、海外など遠隔地に住んでいる人、自然災害の被災者の意見を聴くことも可能となる。地方議会では数年前から既に導入されている。令和4年6月に総務省は地方議会の委員会への参考人招致については「議会への出頭を求めない形での意見聴取は、地方自治法第115条の2第2項によって否定されるものではなく、新型コロナウイルス感染症対策として行う場合に限らず、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法により、意見聴取を行うことは差し支えない」という行政課長通知を通達している。このことから通常時から地方議会の意見聴取はオンラインで行うことが事実上可能となっていた。それより以前の令和2年4月には総務省は既に地方議会の委員会での議員の出席方法について「各団体の条例や会議規則等について必要に応じて改正等の措置を講じ、新型コロナウイルス感染症のまん延防止措置の観点等から委員会の開催場所への参集が困難と判断される実情がある場合に、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法を活用することで委員会を開催することは差し支えない」と行政課長通知において通知し、非常事態時の地方議会では議員がオンラインで出席することを可能とする見解を示している。ただし、本会議については令和2年の通達では認められていなかったが、令和5年には出席が困難である議員が質問をしようとする場合にのみ、条例や会議規則、要綱等の根拠規定の整備や議決又は申し合わせ等の所定の手続きを講じた上で可能であるという見解を国は示している。

 考えようによっては国会が最もデジタル化するのが遅いのかもしれない。国の省庁は地方自治体に解釈を都度伝達するものの、そのお膝元である国会両院の規定改正が後回しになっていたのだから燈台下暗しである。

 地方議会はデジタル手続法に規定する行政機関から除かれているため、地方議会に対する請願書の提出や地方議会から国会に対する意見書の提出などはオンラインでは行えなかった。このことを受けて令和5年の通常国会で地方議会に係る手続のオンライン化などを内容とする地方自治法の改正を行った。それにより、地方議会から国会への意見書の提出、委員会や議員から議会への議案の提出、請願書の提出の提出などが行えるようになった。

 議会に係る手続等のデジタル化は事務の効率化や能率化のためだけに行われるものではない。国民により可視化された議会、手続きの明瞭且つ容易さなど利便性も同時に向上することが期待される。

 これを機に国会のオンライン審議を検討してはどうだろうか。憲法第56条では「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。」とされている。国会法第62条では「各議院の会議は、議長又は議員十人以上の発議により、出席議員の三分の二以上の議決があつたときは、公開を停めることができる。」とある。衆議院規則第148条には「表決の際議場にいない議員は、表決に加わることができない。」という規定がある。本会議においても委員会においてもオンライン審議はできない。

 現代においては現行法に明記されている「出席」という状態が様々になっている。そこに存在する意味での出席とは限らない。インターネットを介して情報ツールを駆使して参加する方法も出席と解釈することができよう。SKYPEやZOOMなど遠隔で面談できる機能を備えたソフトも発達し浸透している。委員会の参考人についてオンライン参加が可能なのだとすれば議員も可能であるし、閣僚等の執行部も同様に可能だ。再び、新型ウィルスが発生する可能性もあるし、大規模災害が起きて執行部が対応に追われることもある。非常時にも議会が機能できるようにオンラインでの国会の開催を可能とする体制の構築を進めるべきである。あくまで物理的な出席が前提であるが、例外的な運用としてオンラインの利用は有効である。非常事態下では既にイギリスでもアメリカでもオンライン審議のもならず評決に至るまでオンラインでの出席が可能とされている。これらの国で大きな混乱は起きていない。ドイツでも在宅でのオンライン出席や採択への参加が可能となった。EUもその動きに連動しオンラインでの採決も可能となっている。日本の国会のオンライン議会制度の導入が進まないのは「開催されている議会のそこにいることにこそ意味がある」という掴みどころのない概念のせいであろうか。形式にこだわらず国会の使命を何時も果たせる体制を取れるように備えることが第一義。テクノロジーの発達は国民にとって機能的には有益である。国会も時代に沿った対応方法を模索し規定を改正していかないと機能の質が低下する。テクノロジーの進化には柔軟に対応するべきであろう。


*オンラインの通信が不安定になった場合の対応をどのように想定しているのか

*オンライン参加の場合での本人確認はどのように考えているのか。

*オンライン参加の参考人の日当は物理的出席の参考人と同じか。

*非常時に備えて議員のオンラインでの委員会参加や本会議の参加を可能とする規定を設けるべきではないか。


参考

地方議会におけるオンライン会議に関する条例 地方自治研究機構

http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/077_online_committee.htm

議会に係る手続等のデジタル化について 都道府県議会デジタル化専門委員会

https://www.gichokai.gr.jp/attach/b02/623_2-4.pdf

「オンライン審議」 関係資料 衆議院憲法審査会

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/shukenshi097.pdf/$File/shukenshi097.pdf

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