ウクライナ・アルメニア・トルクメニスタンとの所得に対する租税条約について

TAXを払うのはわたくしー。

 ウクライナ・アルメニア・トルクメニスタンとの所得に対する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための条約についてである。これらの条約はOECDモデル租税条約の内容を基本している。3カ国とも税率は違うものの改正する箇所は同じでお互いの投資所得に対しての税率の改正である。3カ国とも株式などの配当、金利などの利子、使用料に対する課税税率の見直しである。

 3カ国の共通事項は次の通り。不動産所得については不動産所在国において課税される。不動産等の譲渡所得はその不動産の所在国おいて課税する。事業所得に関しては事業所が所在し、その事業所で発生した利益に関しては事業所が所在する国においてのみ課税できる。給与所得は滞在が183日を超えると役務提供国において課税される。役員報酬は法人の所在地にて課税する。個人(芸能人等)は得る所得は役務提供国にて課税される。政府は県職員は派遣元で課税し徴収する。退職金は居住地においてのみ課税される。学生等が受け取る給付は滞在国にて免税する。以上の点が主な共通事項である。

① ウクライナとの配当、利子、使用料等の税率の改定は下記の図(外務省作成)の通りである。

ほんの僅かではあるが源泉知国での課税税率を緩めている。

② アルメニアとの配当、利子、使用料等の税率の改定は下記の図(外務省作成)の通りである。

アルメニアは投資所得に対してはすべて10%に揃えていてわかりやすい。そのかわり免税はない。

③ トルクメニスタンとの配当、利子、使用料等の税率の改定は下記の図(外務省作成)の通りである。

トルクメニスタンは投資所得に関して全て5%となり一挙に半減以下となった。

改正点は上記の通りであるが、課税を強化した国はない。それは良いことである。事業収益に大きく課税すると両国間での経済活動を阻害する。余程、付加価値のある取引でないと続かなくなる。そういう意味では各国において外国企業の自国への投資活動や経済活動に対しては迎合的な措置を図っていることが多い。外国資本の投資を呼び込みたい各国の思惑は一致しているがその収益を企業グループの親子間で吸収されてしまうと大義が薄れる。各国間で結ばれる租税条約は国際的な脱税や租税回避行為を阻むための措置でもある。経済の活性化と国の財政基盤の充実は両輪であり両立する必要がある。本条約改正による投資課税は市場を尊重した上でのギリギリの課税ラインを提示したものだと受け止めて歓迎するべきであろう。

 さて、登場した3国にについて少しだけ紹介しておく。ウクライナとの租税条約は1986年に締結された日・ソ租税条約から長らく引き継がれてそのまま適用されていた。ところが、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことによって状況が変わる。日本は国際社会と連携しウクライナ支援を行っている。その間を捉えて2024年2月に日・ウクライナ租税条約を締結した。2023年のデータではウクライナの人口は3674万人、一人当たりのGDPは5181米ドルであり人口は日本の四分の一、平均所得は日本の六分の一である。租税条約はG7、中国、インド、韓国等約70カ国と締結し発効済みである。ウクライナに進出している日系企業は38社。在留邦人はロシアとの紛争中なのでほとんどいない。日本からの輸出は自動車や二輪車がほとんどで500億円ほど。輸入は穀物類で150億円ほどに留まる。ウクライナがロシアより独立した当初は軍需産業が盛んであったが中国によって多くの企業が買収された。石炭や鉄鉱石は豊富。天然ウランの埋蔵量は世界有数であるが開発が進まず生産量はわずかである。これまで日本はウクライナに対して多額の支援を行ってきた。ロシアが進行する以前にはODA円借款として約2000億円を支出している。2022年のロシアのウクライナ侵攻後にも人道支援として保健、医療、食料、保護に2億ドル、復旧・復興に9億ドル、ウクライナ情勢の影響を受けた中東・アフリカ諸国に2.5億ドル、ウクライナ政府への財政支援として6億ドル(後に10億ドルの追加支援)、エネルギー分野への支援として4.7億ドル、世銀を通じた財政支援グラントに5億ドルなどである。その他にも難民の受け入れ、ドローン・防弾チョッキ・ヘルメット・防寒服・天幕・カメラ・衛生資材・非常用糧食・双眼鏡·照明器具・医療用資器材・民生車両等の提供や日本製地雷探知機などの提供を行っている。同時にロシアへの金融、貿易、査証などへの制裁を継続して実施している。ベラルーシやドネツクなどロシアを支援する近隣諸国ヘもロシアと同様の措置を講じている。日本がウクライナ支援を行うことに対する方針にはほとんどの日本国民が支持しているがゼレンスキー大統領に対する日本国内の評価は分かれている。2022年4月にゼレンスキー大統領が米国議会で行った演説で「真珠湾攻撃を思い出して欲しい。あのおぞましい朝のことを」と発言し、ロシアがウクライナを攻撃したことを日本が真珠湾を攻撃したことに例えたことによる。米国、EUに次ぐウクライナ支援国である日本に対して礼を失する発言であることは明白である。ウクライナ政府公式Twitterにて「現代ロシアのイデオロギー」と題した動画を投稿。ユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)を行ったナチス・ドイツの独裁者ヒトラーやイタリアのファシズム指導者ムソリーニと共に昭和天皇の顔写真を並べ、「ファシズムとナチズムは1945年に敗北した」と記した。同年同月の24日、「昭和天皇をヒトラーと同一視した」となど批判が高まった事態を受け、動画から昭和天皇の顔写真を削除、Twitterで謝罪した。ウクライナ政府の無礼千万な行為にもかかわらず日本は冷静に事態を静観し巨額の支援を継続している。少なくともウクライナ政府による侮辱的な行為には日本政府として毅然とした抗議だけは行うべきではなかったのか。静観することを政府は大人の対応と考えるのかもしれないが、そのような曖昧な対応が日本の正義と名誉、歴史と文化を軽視することに繋がっているとも考えられる。日本政府には明確で明白な毅然とした対応を願いしたい。ウクライナは古くから北朝鮮との関係も深い。北朝鮮による大陸間弾道弾の開発にはウクライナが技術協力をしている。2022年7月に北朝鮮がドネツクと関係を結んだことでウクライナは北朝鮮との国交を絶った。ロシアが進行するまでのウクライナ政府とゼレンスキー大統領の姿勢には少し不審に思う点があったことも否めない。

 アルメニアは黒海とカスピ海の間に位置する旧ソビエト連邦から独立した国家である。人口280万人という小国であり一人当たりのGDPは8153米ドルであり日本の約四分の一である。租税条約はG7、中国、インドなど55カ国と締結し発効している。金やダイヤモンドの貿易が多く主要取引先はロシアや中国である。近隣のアゼルバイジャンやトルコとも不安定な関係にあり周辺諸国からは孤立気味である。日本はフランス、ドイツ、米国、スイスに次ぐ5番目の援助国である。貿易は小規模である。輸出は鉱山用機械や自動車の約32億円、輸入は衣類やアルミニウムなど47億円程度である。日系企業は6社で在留邦人数は38名。エネルギー資源の産出は無く一か所の原発に頼っているがロシアの融資により設備の近代化に着手している。アルメニアはロシアが主導し旧ソ連5カ国でつくるユーラシア経済同盟(EAEU)の加盟国であるにも関わらずEUへの加盟交渉を開始する方針を決定した。アゼルバイジャンとの紛争でロシアの軍事支援を受けられなかったことに起因している。

 トルクメニスタンはカスピ海に接しウズベキスタンとアフガニスタンとイランに囲まれて立地する。人口は660万人、一人当たりのGDPは11927米ドルであり日本の三分の一程度である。進出している日系企業は7社で在留邦人数は14名である。G7諸国や中国、インド、韓国など45カ国と租税条約を結んでいる。日本は米国、ドイツに次ぐ3番目の援助国である。埋蔵量世界第4位の豊富な天然ガスを有し、中国やロシア、イランに多く輸出している。永世中立国であることを表明しつつも軍事的にも経済的にもロシアと中国の影響力を強く受けている。ソ連時代から綿花栽培を行っているが収穫作業に10歳から15歳の子供にも強制労働を強いていることが告発されており国際労働権利フォーラムで問題視されている。このことで米国からは綿花の取引停止の処分を受けている。ちなみに新型コロナウィルス感染者が一人も出来なかった世界で唯一の国家がトルクメニスタンである。

 以上、ウクライナ、アルメニア、トルクメニスタンともに条約には賛成するべきだと考える。交流規模に関わらず将来を見越してニーズに応えることは有益に違いない。


*日本がアルメニア、アゼルバイジャンに対する主要な援助国である意義と展望を問う。

*特にアゼルバイジャンは中国の影響力が強いと思われるが日本が主要な援助国でい続ける意義を問う。

*アゼルバイジャンの綿花栽培は児童労働など人道的な問題が指摘されているが政府の認識を問う。


参考

日・ウクライナ租税条約 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100803935.pdf

日・トルクメニスタン租税条約 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100803941.pdf

日・アルメニア租税条約 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100803949.pdf

ウクライナへの直近の主な支援・措置 日本政府

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/img/ukraine/jp_stands_with_ukraine_jpn.pdf

アルメニア共和国 基礎データ 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/armenia/data.html

アルメニア 議会でEU加盟交渉開始の法案が可決 ロシア離れ加速 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250327/k10014761801000.html

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