原子力規制委員会の国会同意人事案について

今日の、原発、投手は・・・。

 原子力規制委員会の国会同意人事案についてである。福島第一原発事故の発生前は原子力を推進するために設けた資源エネルギー庁と原子力を規制する為に設けた原子力安全保安院の両方が経済産業省の所管であった。そのために規制する機能が発揮されない状態に陥っていた。そのために新たに環境省の外局として原子力規制委員会を設置し原子力安全・保安院と内閣府原子力安全委員会の部門を移管することで規制機能を経産省から切り離した。原子力規制庁は原子力規制委員会の事務局として設置された。

 所掌は原子力利用における安全の確保に関すること、原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに原子炉に関する規制、核原料物質及び核燃料物質の使用に関する規制、国際約束に基づく保障措置の実施のための規制その他の原子力の平和的利用の確保のための規制、放射線による障害の防止、放射性物質または放射線の水準の監視及び測定に関する基本的な方針の策定及び推進、放射能水準の把握のための監視及び測定、核燃料物質その他の放射性物質の防護に関する関係行政機関の事務の調整、原子力事故の原因及び原子力事故により発生した被害の原因を究明するための調査などである。

 過去の反省から行政職員が規制部門と推進部門を往復する人事を禁ずるノーリターンルールがある。原子力規制庁の職員の電力会社をはじめとする原子力関連企業への天下りを禁じている。

 さて、常勤での新任案である神田玲子氏は東京大学理学部を卒業し東京大学大学院理学研究科博士課程を修了した。住友金属工業を経て放射線医学研究所に入所。平成28年に量子科学技術研究機構放射線医学総合研究所(QST)に移籍。現在は量子科学技術研究機構放射線医学総合研究所理事を務めている。国連UNSCEARの副議長やOECDの放射線防護公衆衛生委員会の副議長を歴任している。QSTは原子力規制委員会と文科省の共管であることから規制員会委員に任命されることは内部昇進に近いことである。神田玲子氏の専門がそのもののズバリであり、放射線の健康への影響に関する研究の第一人者であることから常勤での新任案には賛成するべきだと考える。

 常勤の再任案である杉山智之氏は東京工業大学工学部を卒業し東京工業大大学院工学研究科博士課程を修了した。日本原子力研究所に入所した後、日本原子力研究開発機構に入社。同機構の安全研究センター副センター長に就任し令和4年から原子力規制員会の常勤委員を務めてきた。最近の論文に「シビアアクシデント時に液相から放出される無機ヨウ素量を化学及び物質移動の寄与に分割する解析モデルの開発」がある。1期5年を務めたがひとつ気になることがある。杉山氏に限ったことではないが原子力規制委員会の判断を下すスピードである。昨年の11月に原子力規制委員会は日本原電が申請していた敦賀原発2号機の再稼働に関して認めず不合格とした。規制委員会での採決は全会一致。理由は原子炉建屋の真下にある断層が将来動く可能性が否定できないからだという。ダメならダメでしようがない。安全第一が大原則である。だが一言苦言を呈したい。日本原電が再稼働を申請したのは10年も前のことである。再稼働の可否を判断するのに10年も要するべきではない。この10年のうち5年に杉山氏は関わっていたはずである。あまりに効率の悪い仕事ぶり杉山氏自身は疑問を抱かなかったのか。行政手続法に基づく標準処理期間は2年とされている。10年も引っ張られ唐突に不合格を言い渡された日本原電の損害は計り知れない。北海道の泊原発も再稼働を申請してから10年以上が経過しても未だに許可は出ない。もし不許可の場合は既にラピダスの半導体工場の建設も進んでおり国家的損害を被ることになる。原子力委員会は自分たちの判断の遅さによる影響の大きさを再認識する必要がある。そしてなにより、事業者に対して活断層が動かないなどという悪魔の証明を求めることを許してはならない。原子力規制委員会自身が方法論すら持たないことを求めることは凡そ科学者とは呼べない。現委員には深い反省と自戒を求めたい。原子力規制委員会の怠慢と暴論によって原発54基中33基しか許可されず、稼働しているのは12基しかない。その影響で国民が負担する電気料金が凄まじく高騰している。「安全」は大事、しかし、安全を紋所にマウントしてはならない。


参考

規制委の偏向審査 強引な幕引きは許されぬ 原電は敦賀稼働へ再申請を 産経新聞

https://www.sankei.com/article/20240807-V3IHAUD3B5NNNBV5AUV3CG3KFI/

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