中央社会保険医療協議会共益委員の国会同意人事案について

保険きが強い。

 中央社会保険医療協議会共益委員の国会同意人事案についてである。昨年にも今年の2月にもレポートをしたのでその一部を引用する。

「中央社会保険医療協議会(中医協)は医療保険の診療報酬の改定および療養担当規則の改定に関して厚生労働大臣の諮問を受けて審議や答申するほか自ら建議することを任務とする厚生労働大臣の諮問機関である。協議会の委員は健康保険を代表する委員が7名、医師を代表する委員が7名、公益を代表する委員が6名となっており、総勢20名で構成されており全員が非常勤である。

 国民、患者の元に薬が届きにくい状況が4年間継続している。供給不安は日常的な治療薬から手術等に用いる薬剤、慢性疾患薬まで多岐にわたり、適時適切に医薬品にアクセス出来ず、国民の命と生活が脅かされる事態に直面しているとして野党は中間年薬価改定の廃止を求める政府への申し入れを行っている。不適切な価格交渉が拡大し、個々の医薬品の価値を損なう過度な値引きが常態化している。適正な市場実勢価格に基づく薬価改定が機能不全に陥っている。毎年薬価改定が行われ、医薬品の産業基盤が過度な価格引き下げによって揺らいでいる。国が公定価格と実売価格の差を縮めるために薬価引き下げを行ってきた結果、不採算もしくは採算性の悪い医薬品の生産が減少し薬不足が蔓延する結果となった。また、昨今の原材料の高騰もあり医薬品会社の体力も弱まっていることが危惧されている。

 中医協は令和7年も薬価改定に向けて検討を続けている。医薬品業界からの「中間年薬価改定は安定供給確保に逆行する」とした意見陳述がされた。これに対し中医協委員からは「2024年度改定で手当てされたイノベーション評価・安定供給確保の効果、つまり業界の取り組み状況を明らかにすべきである」と指摘している。薬価改正においては実売価格との乖離が大きいものについては依然としてギャップ解消を図る方針であるが、同時に原材料の高騰や不採算の薬品に関しては薬価引上げを行っている。中医協による取り組みよって公定価格と実売価格の差を5.2%にまで縮めた功績は大きい。中間年改定の廃止論は政治に一任し中医協は医薬品不足の解消する為の施策も念頭に置いて薬価改定に取り組んで欲しい。」

 平成16年には中医協で贈収賄事件が発生している。算定報酬や単価の引上げに関する収賄で日歯連5名、中医協2名が起訴されている。このような国民に対する背任行為が再び起こらないようにガバナンスを重視してもらいたい。政策を売買するに等しい愚かな行為であり厚労省の諮問機関として恥ずかしい出来事である。風化させずに戒める必要がある。委員には保険を代表する委員、医療を代表する委員、公益を代表する委員がいる。当時者や関係者は完全に権益意識を排除することは容易ではない。しかし、公益委員は本来は俯瞰的な立場で判断できるはずである。よって、公益委員は保険委員や医療委員のお目付け役になることも期待したい。

 さて、非常勤での再任案である飯塚敏晃氏は東京大学工学部を卒業後、コロンビア大学大学院とカルフォルニア大学大学院を修了し青山学院大学と慶応大学で教授を務め、現在は東京大学公共政策大学院院長に就いている。本協議会の委員は3期目の再任案となることから任命されると今回が最終になると思われる。医療経済学が専門で本協議会では費用対効果に関する部会をリードしている。経済学者としての研究としては子供の医療費の無料化に警鐘を鳴らしている。無償化の結果として25%の医療費の公的負担の増加や不適切な薬の処方や価値の医療行為が増えるといった悪影響を指摘している。無償化して子供の受診機会が増えても健康増進には繋がっていないと結論付けている。この主張は医療関係の委員との利害が相反することから貴重な意見であるし、核心を射ていると受け取れる。よって、飯塚敏晃氏は公益に適う見識を有していると思われ非常勤での再任案には賛成するべきだと考える。

 非常勤での再任案である本田文子氏は上智大学文学部を卒業後、ザビエル大学院を修了して世界銀行東京事務所に入行。その後、東京大学大学院医学系研究科を修了、ロンドン大学で衛星熱帯医学大学院研究員を務めた後、ケープタウン大学講師、上智大学教授を経て現在は一橋大学経済学部教授を務めている。専門は保険・医療の経済学で保健・医療政策の実施とガバナンスの研究をしている。専門家としてはそのものズバリである。コロナ禍以降に将来の「ヘルスショック」の再発に備えて、日本を含めフランス、カナダ、ブラジルなどの保険医療分野の対応を研究している。海外での研究歴も長く国際感覚とバランスに長けた学者であろう。医療の質や公平性に関する論文もあり公益性も適う。以上のことから本田文子氏の非常勤での再任案には賛成するべきだと考える。

 

 

中医協を巡る贈収賄事件について(概要) 厚労省

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/02/dl/s0222-14g.pdf

飯塚敏晃の医療経済学のブログ

https://toshiiizuka.com/

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