日本銀行政策委員会委員の審議委員の同意人事案について
バンクるわせ。
日本銀行政策委員会委員の審議委員の同意人事案についてである。2月に引き続き日本銀行政策委員会の人事がある。2月には小枝淳子氏が任命されることで所謂リフレ派は野口旭氏一人となった。今回の人事もリフレ派ではないもののハト派である日立製作所出身の中村豊明氏の退任に伴う人事である。
日銀政策委員会は通貨及び金融の調節に関する方針を決定するほか、その他の業務の執行の基本方針を定め、役員の職務の執行を監督する権限も有している。日本銀行には、役員として、総裁、副総裁(2名)、審議委員(6名)、監事(3名以内)、理事(6名以内)、参与(若干名)が置かれている。このうち、総裁、副総裁および審議委員が、政策委員会を構成している。政策委員会は戦後、GHQによって民主化の一環として設置された。任期は5年、9名全員が常勤で報酬は2600万円と高額。金融政策に関する事項を決定する金融政策決定会合は年8回、通常会合は週2回行われる。
令和6年7月と令和7年1月に日銀はマイナス金利政策を解除して利上げに踏み切った。賃上げの動向を見ての利上げであろうが実質賃金は3年連続のマイナス。日銀の利上げによって国民の銀行借入に対する利息負担も当然増えることになる。例えば3千万円のローン残高で30年の返済期間が残っている場合は月5000円以上の国民の利息負担が増えることが考えられる。年間約6万円の負担増は国民民主党が推し進めてきた基礎控除や給与控除での減税を帳消しにしてしまう。控除の拡大で減税した分を日銀を使った増税で取り返すという政府のウルトラな手法には驚かされる。これぞ政府と日銀の阿吽の呼吸というもの。
2回の利上げに反対してきた日立製作所出身の中村豊明氏が任期満了で退任するのは残念なことである。リフレ派の安達誠司氏も2月に退任しており、リフレ派の野口旭氏を除いてほぼ全員がタカ派となる。トランプ関税が経済界や産業界の景気を押し下げることが強く懸念されている状況の中でマイナス金利解除や利上げ、金融緩和政策の転換に反対してきた中村豊明氏が退任することには杞憂する。
さて、常勤での新任案である増(ます)一行氏は東京大学法学部を卒業後、三菱商事に入社、平成28年から令和4年までは代表取締役常務執行役員としてCFOを務めた。現在はAstemo社の監査委員、公認会計士協会理事に就いている。経済界出身の中村豊明氏の後任として同じく経済界出身の増一行氏が就くことには一定の期待が持てる。できればハト派色を中村氏並みに残してくれることを増氏に期待したい。
日本の企業は中小企業率が高い。中小企業の体力は脆弱であることが多い。増氏には中小企業への配慮を念頭においた金融政策を推し進めて頂きたい。増氏が製造業ではなく商社出身ということが少し気がかりではあるが、中村氏に代わって産業界ポストに収まるのであれば企業収益の増加が盤石なものになるまでは利上げに慎重な姿勢であって頂きたい。中村氏が抜けてハト派色が薄まってしまうことが懸念される。
日銀の利上げによる長期金利の上昇とトランプ不況の影響を同時に日本企業が背負うことになるとマイナス成長を免れない。経済が悪化する中でインフレばかりが加速すると国民の更なる貧困化が進む。日銀は難しい舵取りを迫れており、日銀政策委員会の金融政策決定会合は注目されている。増一行氏の常勤での新任案には経済界出身ということから期待を込めて賛成するべきだと考える。
参考
日本銀行について 日本銀行HP
https://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/index.htm
日銀審議委員に元三菱商事常務の増一行氏 朝日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/faa74bf3dba69efdfd69648ffdb1555bd17adc3a
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