労働保険審査会委員の同意人事案について

みなさ~ん、保険金ですかぁ~。

 労働保険審査会委員の同意人事案についてである。本委員会については昨年同時期にもレポートしている。そこから一部を引用する。https://masahikosakamoto.amebaownd.com/posts/52409506

「労働保険の保険給付等に関する処分について不服のあるときは、各都道府県労働局に置かれる労働保険審査官(労働者災害補償保険(労災保険)については労働者災害補償保険審査官、雇用保険については雇用保険審査官)に審査請求をする。審査官の決定に不満があるときは労働保険審査会に再審査請求できる。労働保険審査会の職務の多くはこの労災と雇用保険の決定に対する再審査であるが労災に関するものが9割以上である。」

「労災に関する採決のケースは多様である。業務上外、治癒認定、再発認定、障害等級、給付日額、受給権者、労働者資格、通勤災害などである。それらに該当するすべての事案において状況も事情も違う。医師の診断書や勤務記録などから個別に可否を判断する。高い高潔性と医師の専門性、法曹者の広く深い学識が必要となる。」

 令和5年の労災に関する申立て数は531件、決済件数551件、残件数は341件である。雇用保険に関しては請求が25件、決済が17件、残件数が19件であった。事案としては業務上の災害であるかどうかを争うケースが多い。労災に関して都道府県の裁定が覆ったは4件だけであり僅か1%に過ぎずほとんどが棄却となる。雇用保険の事案に関しては都道府県の裁定が覆ることはなかった。労働保険審査会で救済される確率は1%程度であり刑事裁判での無罪判決を勝ち取ることと難易度はほぼ一緒。相当ハードルが高い。

 さて、常勤での再任案である菅野淑子氏は北海道大学大学院社会環境学研究科修了後、オスロ大学研究員、北海道教育大学教授となる。労働紛争担当参与や北海道地方最低賃金審議会委員を経て労働保険審議会委員を務めている。労働法や紛争解決、ハラスメントが専門。事あるごとに女性躍進を唱える学者であると思われるが、本審議会は一人の委員につき年間70件程度の裁定に関わることになるのでそのような暇は無いし、本審議会委員は男性3名、女性6名となっていてジェンダーのバランスは女性過多であるから文句なかろう。さしあたり、菅野淑子氏の常勤での再任案には賛成するべきだと考える。

 常勤での新任案である齋藤育子氏は東京大学法学部を卒業後、国税局を経て衆議院に勤める。衆議院調査局調査員を長く勤め、法務委員会専門員、財政金融委員会専門員、予算委員会専門員を歴任し定年退職した。旧労働省や衆議院法制局への出向経験もある。立法に関わる調査などを長年経験し国政に係る諸問題に詳しい。経歴から実務能力も備わっていると思われ、齋藤育子氏の常勤での新任案には賛成するべきだと考える。

0コメント

  • 1000 / 1000