人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案(AI推進法)について

バックAI、AI、AI。

 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案、いわゆるAI法案である。AIに特化した初めての法律案となる。この機会にAIを利用してAI法についてXのGrokを利用して検索してみた。

『日本では、2025年2月28日に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案」(通称AI法案)が閣議決定され、現在国会で審議中です。この法案は、AIの技術革新と活用を促進することを主目的としつつ、悪用リスクへの対策も含んでいます。特徴としては、国がAI事業者に対して調査や指導を行う権限を持つ一方、罰則規定は設けず、ソフトロー的なアプローチを採用している点が挙げられます。これは、欧州連合(EU)の「AI法」のような厳格な規制とは異なり、技術開発の推進とリスク管理のバランスを取ろうとする「日本型モデル」とされています。

例えば、生成AIによる偽情報の拡散や著作権侵害などの懸念が指摘されていますが、現行法(著作権法など)で対応する方針が示されており、新たな規制の導入は見送られています。また、AI戦略本部を設置し、国全体のAI政策を統括する仕組みも盛り込まれています。

他国の状況を簡単に触れると、EUでは2024年5月に成立したAI法が2026年から全面施行予定で、リスクに応じた規制を課す内容です。米国では州レベルや連邦レベルで規制が模索されていますが、統一的な法律はまだありません。』

 非常に簡潔で良く纏まっている。AIによる検索や集約や要約は既存の公開資料による事項はほとんどであるから論評も含めて記述する。2023年5月のG7広島サミットで岸田総理が提唱した「広島AIプロセス」で生成AIを含む高度なAIシステムに関する国際的な指針と行動規範を含む包括的政策枠組みを閣僚級会合でとりまとめG7首脳に承認された。その内容は「生成AIに関するG7の共通理解に向けたOECDレポート」「全てのAI関係者向け及びAI開発者向け広島プロセス国際指針」「高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際行動規範」「偽情報対策に資する研究の促進等のプロジェクトベースの協力」の4つである。その後、国内におけるAIガバナンスの統一的な指針として「AI事業者ガイドライン」が2024年4月に公表された。ガイドラインでは、AIの開発・提供・利用に関係する事業者が取り組む事項について、人間中心、安全性、公平性、プライバシー保護、セキュリティ確保、透明性、アカウンタビリティ、教育・リテラシー、公正競争確保、イノベーションに関する共通の指針を示している。

 日本政府はガイドラインを中心としたソフトロー的な対応を行ってきたが、今国会でAIに関しての初の法整備を行う。理念は安全保障上必要であること、国際競争力を高めること、適正な研究開発・活用のため透明性の確保とされている。研究開発・活用の推進のために政府が実施すべき施策の基本的な方針を盛り込んだAI基本計画を策定する。施策は研究開発の推進、施設等の整備・共用の促進、人材確保、教育振興、国際的な規範策定への参画、適正性のための国際規範に即した指針の整備、情報収集、権利利益を侵害する事案の分析・対策検討、調査、事業者・国民への指導・助言・情報提供などである。国民の権利利益の侵害される事案が発生した場合は国が事業者への指導や助言を行うこととされる。責務として事業者は国等の施策に協力しなければならないことが規定される。これらの条項には罰則を設けずに事業者とコミュニケーションをとりながらAI法の在り方の検討を継続していく方向性である。本法は飽くまでAIの研究開発と適正な活用を推進するための法律であって規制を目的としたものではない。

 AIの提供者と活用者のリスクについてであるが、人の生命・身体等に直接影響を及ぼすおそれのある医療機器や自動運転車などには既存法が存在する。医療機器に関しては医薬品医療機器等法によって、構造、使用方法、性能等について、臨床試験データ等に基づいて審査された結果、厚生労働大臣によって承認されたものでなければ販売できないことになっている。医療機器の審査に関する基本的な考え方はAI活用の有無によって変わらない。診断や治療を行う主体はあくまで医師でありAIは補助ツールに過ぎない。自動車は道路運送車両法によって構造、装置及び性能について保安基準が定められており、保安基準適合性が確認されたものでなければ運行の用に供してはならないとされている。自動運転車は自動運行装置が運行設計領域において使用されると仮定した場合の保安基準適合性について審査を受け認可されたものでなければならないとされている。

 権利侵害や差別的対応に関するリスクであるが、AIによる面接をスクリーニングした結果がネガティブであってもそれを最終決断しているのは人であることからAI法で新たに規定する必要はない。男女雇用機会均等法や労働基準法の規定を適用することが肝要である。国籍や信条についてAI活用によってどのような情報がもたらされようと差別的扱いができないことは既存法に措置されている。ただし、現在は人が行っている行為をAIが代替するようになった場合は人が行う行為との同意性等をどのように評価するのかについての法的な検討が必要になる。

 偽情報や詐欺情報の拡散のリスクも顕在化している。政府には被害発生の恐れのある情報を調査して結果を公表することで国民や事業者に注意喚起することが求められる。偽・誤情報の生成・拡散に対する技術的な対策として、AI生成物に電子透かしを発行し刻印することで受信者にAI生成物であることが容易に判別できるようにすること、コンテンツの出所や来歴を付与する技術を普及することで正しい情報が偽情報に紛れてしまわないようにすること、オンラインプラットフォーマーがAI生成物を判別しラベリングすることなどの方法が検討されている。

 インターネット上の違法・有害情報に対する対策として昨年5月に情報流通プラットフォーム対処法が成立している。同法によってプラットフォーム事業者に対し、対応の迅速化、運用状況の透明化の具体的措置を義務づけられたがデジタル空間における情報流通の健全性確保に関して引き続き総務省において検討が進められている。なりすまし広告等真実でないインターネット上の情報による被害が多数発生している。AI技術の発展・普及により情報の改ざんや偽情報の生成が精緻化・巧妙化していることを踏まえる必要がある。

 生成AIによる著作権等の知的財産権の侵害リスクについては内閣府のAI時代の知的財産権検討会で議論が為されている。法、技術、契約の各手段は相互補完的に役割を果たす関係があることを前提としてAI技術の推進と知的財産権の保護の両立が適う制度を模索している。特に侵害リスクとして取り上げられるのは知的財産権としての保護の対象となっていない労力や作風、声、肖像等についてである。知的財産法だけでは解決できない複合的なリスクへの対応策についても検討する必要があろう。AI技術の急速な発展に伴う生成AIの一般への普及により多くのクリエーターから著作権を懸念する声が上がっている。文化審議会による取り纏めでは各関係者が生成AIとの関係における著作物等の利用に関する法的リスクを自ら把握し、著作権等の権利の実現を自ら図るとして当事者同士の自助努力による環境整備を行うことを促した。つまり、法解釈では解決しない問題については相互の理解を促進するという曖昧な答申となっている。ちなみに限定データの不正取得・不正使用は不正競争防止法違反となる。

 最後にヨーロッパとアメリカのAI法について記す。EUは加盟国に統一に拘束するAI規制法を制定した。リスクベースでアプローチする体系をとっている。規制区分としては、許容できないリスクAI、ハイリスクAI、限定リスクAI、最小リスクAIの4つ。「許容できないリスクAI」 に関する規程に反した場合は4,000万ユーロ(約60億円)か全世界売上高の 7%のうちどちらか高い金額という巨額の制裁金が課される。併せてAIシステムの市場からの取り下げやリコール等の制約措置が為されEU内でのビジネス活動が困難となる。アメリカはトランプ大統領がこれまでの規制等を直ちに見直すことなどが宣言してAIに関する規制緩和と開発奨励の方向に転換している。アメリカは自主的な取り組みを重視していると言える。総じて日本もアメリカに近い対応と言える。規制をできる限り行わず技術開発と普及を推進し、リスクに関しては既存法の範囲で適用するか、もしくは既存法の改正で対応するスタンスである。何か問題が起きてから事後救済することは殊更に非難されるが、時代を動かす技術革新を抑制してはならない。法整備の速度以上の速さでAI技術は進歩しているのだから。いま必要とされていることはAIと共に歩むための法整備であることは言わずもがなである。

追記:附帯決議案ではAI活用に人間中心のAI社会原則が明記されAIに人間の倫理観と価値観に沿って開発を進めること、縦割り行政を排除すること、児童ポルノ被害者への配慮、個人情報や国民の権利の保護、戦略本部に民間人材の登用、理的財産やパブリシティ権の侵害への対応などが盛り込まれている。予算に措置がされる可能性のある項目はAI技術の研究開発や人材の育成への投資であるが、これは官民でのことであり行政にばかり義務付けられたものではない。そもそも付帯決議は義務付けられることではない。遺漏なきよう(手抜かりのないように)取り組むということである。

上記、付帯決議に関して法の施行上の実務に関しての事項であり異論はなく賛成するべきであると考える。


*社会においてAIの活用が急速に進んでいる中で多くの国民がAIに対して不安を抱いているというアンケート結果もある。(A global study 2023, KPMG)国民が何を懸念しているのかについて政府の見解を問う。

*2023年の民間事業者によるAI事業への投資額は国別でアメリカが約672億ドル、中国が約78億ドル、イギリスが約38億ドル、日本が約7億ドルとなっており世界では12位となっている。広島サミットでAIプロセスを主導した日本の投資が進まない状況を政府はどのように評価するのか見解を問う。

*AIによる契約書など法的な書類のチェックサービスを事業として行うことは弁護士法に違反するのか否か。

*生成AIが学習段階で既存の著作物から得たデータを活用し生成・利用したことで著作権侵害が認められる場合、AIの利用者だけでなく、生成AIに関するサービス提供者が著作権侵害について責任を負う可能性について政府の見解を問う。

*AIによる開発やAIの活用において人間の倫理観と価値観に沿って開発を進めるとはどのような事態を念頭においての提起なのか。また、その主体はAIなのか、人間なのか。


参考

人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21709029.htm

人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案(AI法案) 概要

https://www.cao.go.jp/houan/pdf/217/217gaiyou_2.pdf

人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案 附帯決議案

https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/naikaku2C59590D86DDF9A049258C73000C0C74.htm

「AI制度に関する考え方」について 内閣府 

https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_senryaku/9kai/shiryo2-1.pdf

人工知能に関する法制度について調べる(リスト) 国会図書館

https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/politics/airegulations

生成AIめぐり規制と技術革新の両立目指す新法案提出へ NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250106/k10014685481000.html

人工知能法学を識る インタビュー NII

https://www.nii.ac.jp/today/97/1.html

AI規制をめぐる、世界各国と日本の動向 NEWTON

https://www.newton-consulting.co.jp/itilnavi/column/ai-act_trends.html

AIに関する日本の法規制 創佐藤法律事務所

https://innovationlaw.jp/aiguideline/

AIの法規制をめぐる各国の動向と日本企業への影響 ソフトバンク

https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202503/trends-in-ai-regulation/

AIを規制する法律の現状は? モノリス法律事務所

https://monolith.law/corporate/ai-law-regulation

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