スポーツ基本法改正法案について
す坊主・・・。
スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律案についてである。なんと採決予定の2日前に議了案件として飛び込んできたので情報が非常に少ない。こんな時なchatGPTに頼るしかないと思い質問してみたが・・・「2025年6月11日現在、国会に提出されたり、閣議決定されたりしたという情報は確認できませんでした。」とのこと。chatGPT大先生でもお手上げ。しようがない、参議院議案課から(村上秘書が)もらい、それを私がもらい、取り敢えず着手。
本法案の骨子は以下の通り。
スポーツ基本法
一、前文(1)スポーツを親しむ機会の確保、(2)多様な国民一人一人の域外と幸福の実現、(3)スポーツと芸術等の他の分野との連携、(4)スポーツの果たす役割における「する」「みる」「支える」「集まる」「つながる」の明治
二、理念1.(1)スポーツに親しむことができる機会の確保、2.国民の生き甲斐と幸福の実現、3.スポーツにおる地域振興、4.スポーツによる長寿社会の実現、5.スポーツによる共生社会の実現、6.国際的な規模の競技会の例示
三、スポーツ団体の努力1.スポーツ団体の運営基盤の強化と健全な運営の確保、2.国が連携を図る関係者としての民間事業者を明記
四、推進計画1(1)スポーツ施設の整備、(2)スポーツに関する諸科学の例示、(3)スポーツ推進に寄与する情報通信技術活用の環境整備、(4)発達段階に応じたスポーツの推進、(5)スポーツ団体とスポーツ産業の事業者との連携に関する施策を講じる、2(1)需要に応じたスポーツを楽しむ機会の確保、(2)情報通信技術を活用したスポーツの機会の充実、3(1)障害者スポーツの名称をパラスポーツに変更、(2)国民スポーツ大会、全国パラスポーツ大会の意義の明示、(3)国際大会の招致等の適正の確保、(4)企業が果たす役割の明示、4(1)優越的関係を背景とした言動、性的言動、ネット上の誹謗中傷などに対する措置の義務、(2)スポーツにおける不正な操作を防止する措置、(3)国はドーピング防止の国際規約に従い関係団体との連携を図る、(4)スポーツの公正確保の為にスポーツ団体の運営に関する指導や状況報告を求める
五、改正ナシ
六、国は地方自治体やスポーツ団体がスポーツ振興の為に必要な資金を得るための措置を講ずる
スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律
・「一般社団法人日本スポーツフェアネス推進機構」を国の連携する関係者とする
以上が法案の骨子である。
選挙前の議員立法だけあって訝しい内容が含まれてしまっている。それは何か、スポコンである。本法第12条3が新設されており、国と自治体がスポーツ施設を総合的かつ複合的に整備し、自治体のまちづくりと一体的に推進することが明記されている。つまり、スポーツコンプレックスの整備を進めるということ。スポーツコンプレックスとは陸上競技場、サッカー場、テニスコート、スイミングプール、体育館などが集まっている複合施設を一般的に意味する。味の素スタジアムや神戸総合運動公園などがそれだ。スポーツ振興や教育活動の場であるとすることで文科省も自治体も予算獲得のハードルが下がる。ちなみに第10条の「自治体はスポーツ基本計画を参酌して」と「自治体は単独でまたは共同して」と改正することで自治体と国、外郭団体、民間事業者と共同して計画を作成できることになる。その計画としてスポコンを盛り込まれることが想定されているのではないか。
国や地方自治体は地域活性化や地域経済振興の旗印のもと多くの箱物事業を展開してきた。その結果はどうか。うまくいった例は非常に少ない。その多くが採算度外視の不採算事業となっている。例えば「味の素スタジアム」は東京都、三鷹市、調布市、府中市などの自治体と京王電鉄株式会社、株式会社みずほ銀行、株式会社三菱UFJ銀行、みずほ信託銀行株式会社、株式会社三井住友銀行など民間企業に加えて、何やら胡散臭い公益財団法人特別区協議会、公益財団法人東京市町村自治調査会という団体が出資している。決算上は毎年赤字続き、令和6年度の赤字は約1億円となっているが、実はその2倍以上の赤字が出ているのが実態である。なぜならば東京都が武蔵野の森総合スポーツプラザ指定管理料という名目で赤字補填を続けているからだ。令和5年には東京都から味の素スタジアムに2.4億円以上が支払われており、これは貸付ではないので負債勘定には入らない。味の素スタジアムは球技場、陸上、野外コンサート、フリマなど多目的に活用できるスポコンである。JリーグのFC東京などプロスポーツチームの本拠としても使用されている。それにも関わらず毎年赤字続きである。東京ですらこの状況なのだから全国的にスポコンとしての箱物事業を展開することに採算も勝算も期待できないのは明らかだ。札幌ドームも大阪ドーム(京セラドーム)も収益はマイナス、自治体の頭痛の種になっていることは周知のとおり。
また、法案の中に何度も登場する多様性とは障害者のことを指してのことのように扱われているがそれは違う。詳細に読み込むとそれが性的指向およびジェンダーアイデンティティを指していることがわかる。法律でいうと「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」と「男女共同参画社会基本法」を踏まえた措置である。LGBT法のこと。LGBTQを差別することはない、憲法上でも権利が保障されている。だが、LGBT問題には、一律の規定を定める必要があるのかどうか、行政や企業が個別の対応が可能なのかどうか、性自認と戸籍上の性別の問題などの課題が残されている。婚姻に関しては「両性の合意」など憲法上の問題もある。本法案に基本法だからと言って画一的に盛り込むことには違和感を抱く。とりわけスポーツにおいてはトランスジェンダー女性と男性アスリートとの比較的な議論が為されているが確固とした結論は存在しない。学論の中にはトランスジェンダー女性の優位性に反して不変的で不均衡な優位性があるという思い込みに警鐘を鳴らしていることもある。例えば、循環器系はトランスジェンダー女性より女性の方が優れているという検証もある。とはいえ、ラグビーやトライアスロンではトランスジェンダー女性の参加が認められていない。スポーツを取り巻くLGBT問題に関しては議論と検討の進展を待つべきであり性急に現状以上の法整備を進めるべきではないと考える。
最後にスポーツに関する情報通信技術の活用と整備についてであるが、これはeスポーツのことである。eスポーツに関しても課題は多い。高額賞金に関しては景品表示法において議論があるが仕事の報酬としての報酬であるならば賞金の上限は設けないこととされている。風俗営業適正化法に関してはゲームセンターの許可制によってとりあえず問題が解決されたとしている。だが参加料を徴収する大会の可否については議論の余地が残されている。さらに参加料から賞金が払われることが賭博罪に該当するのではという議論は結論が出ていない。ビデオゲームには著作権の問題も残されている。これらの諸課題についても整理を進めた上で法的に推進するべきであると考える。
以上の通り本法案には未だ議論の余地が残されており課題も多い。なにより公益を謳い箱物公共事業を更に進める為の予算措置を可能とするための改正を含む条項も見られることから本法案には浅慮に賛成するべきではないのではないだろうか。
*スポーツとジェンダー問題は画一的に取り扱えない問題であり一概に法規定するべきではないと考えるがいかがか。
*eスポーツについても賭博法との関係で論点が残されており未だに整理がされていないと認識する。法規定を先行するべきではないと考えるがいかがか。
*国と自治体によるスポーツに関する総合的な施設の整備はいわゆるスポーツコンプレックスという箱物事業だと認識するが、これまでの実例を鑑みると採算性は低いと思われる。同じ過ちを繰り返さないためにも安易に箱物投資を進めるための法規定を進めるべきではないと考えるがいかがか。
参考
味の素スタジアム 決算29期
https://www.ajinomotostadium.com/corp/pdf/kessan29.pdf
スポーツ基本法改正法案
https://drive.google.com/file/d/1jRHT8xo94e-q8UhaZ4FPx2tGAl8rMb6m/view?usp=drive_link
eスポーツと法規制 YUKI MATSUMOTO
https://note.com/ymgamelaw/n/n5c9128b4c2bb
LGBTの現状と課題 参議院
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2017pdf/20171109003.pdf
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