ギャンブル等依存症対策基本法改正法案について
仕事、ギャンブルぞ!!
ギャンブル等依存症対策基本法改正法案が与野党の合意を得て提出された。オンラインカジノの利用者の増大を受けて政府が策を講じた。今年2月にはプロ野球のオリックス球団に属する山岡泰輔選手がオンラインカジノを利用していたことから警察の聴取を受け書類送検されたことが報じられた。その後、4月に入って吉本興業の芸人6人がオンラインカジノに興じたことが発覚し書類送検されている。一番多く利用した芸人は約5100万円をつぎ込み1200万円のマイナスだったという。人気芸人の令和ロマンの高比良くるま氏やトロサーモンの久保田かずのぶ氏も警察の聴取を受けたが書類送検はされていない。5月に入って巨人のオコエ瑠偉選手と増田大輝選手もオンラインカジノをしていたとして書類送検された。近年、警視庁はオンラインカジノの違法性の周知と取締りを強化してきたが利用者の数は拡大の一途を辿っていた。令和5年のオンラインカジノ利用者の検挙は107人、令和6年は279名となっている。警視庁が3月に公表した調査では国内でのオンラインカジノ経験者は約337万人、年間賭け金総額は約1兆2423億円と推計されている。公営ギャンブルに匹敵する巨額が流入する市場を形成しつつある。特に20代30代の若年層の利用者が多くなっており、オンラインカジノを利用することが違法であるという認識がない利用者も多い。「オンラインカジノは海外で合法的に運営されているから利用しても大丈夫」「日本には取り締まる法律がない」「違法だと知らなかったと主張すれば罪にならない」といった誤った情報を真に受ける者もいる。オンラインカジノが違法だと知らなかったという者は43%に上っている。刑法第185条には、「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する」という「単純賭博罪」の規定がある 。オンラインカジノで実際のお金を賭けてゲームをプレイする行為は、この条文に直接該当する。多くのオンラインカジノサイトはマルタやキュラソーといった国で合法的なライセンスを取得して運営されているが属地主義によって利用者が日本国内の自宅のパソコンや外出先のスマートフォンから海外のオンラインカジノサイトにアクセスして賭博を行った場合、その行為地は日本国内と見なされ日本の刑法が適用される。警察庁や政府広報は「オンラインカジノは犯罪です!」というスローガンを掲げてウェブサイトやポスター、SNSなどを通じてその違法性を国民に広く周知するためのキャンペーンを積極的に展開している。オンラインゲームにグレーゾーンなどなく違法だとは知らなかったという言い訳は法的に通用しない。無料で開始できたり、暗号資産で決裁できることで違法性を免れることも決してない。検挙摘発された場合の刑罰は、罪名が単純賭博罪の場合は利用者に対して50万円以下の罰金または科料、常習賭博罪の場合は3年以下の懲役、罪名が賭博場開帳等図利罪の場合は運営者やアフェリエイターに3ヶ月以上5年以下の懲役、常習賭博幇助罪の場合は運営協力者や資金決済者に対して常習賭博罪の共犯として処罰される可能性がある。
警察の取締強化に反してオンラインカジノのサイトやSNSやネット広告を通じた誘導が拡大している。それらによる情報によってオンラインカジノがあたかも気軽に利用できるものであるかのような印象を与えてしまっている。オンラインカジノの急速な利用拡大にブレーキを掛けたのが冒頭のプロ野球選手や有名芸人への警察の聴取と送検に対する報道である。この報道によって43%の利用者がオンラインカジノが違法だと知らなかったとしていたが一気に周知されたのではないだろうか。警視庁の調べによると40のオンラインサイトの全てが日本からの利用が可能であった。また、40 サイトのうち日本からのサイトの利用を一部のゲームで禁止する旨を記載していたサイトは 2つにとどまった。さらに「20歳未満の日本人」の利用を禁止する旨を記載していたサイトも3つ存在した。一方、残りの35サイトでは日本国内からの利用を明確に禁止する記載は見られなかったとしている。オンラインサイト側は法的な問題を回避するためにサイト内の利用規約や公式ブログ等で「日本国内の利用者は自己責任で利用するように」といった文言を記載したり、日本国内での利用に関する法律に触れた記載もある。一部のサイトでは日本国内からのアクセスを制限するための措置を講じていたり、サイトへのアクセス時に、制限エリア外からのアクセスである旨の注意喚起がポップアップ表示される措置がとられるケースもある。いずれにせよ、日本国内での違法性に関して明確に言及する注意喚起は取られていない状態であった。本法とは違う次元で違法賭博は明確に犯罪である。本法があろうがなかろうが関係なく当然こととして犯罪は取締りの対象であり厳しく罰せられて然りだ。ギャンブルが依存症に陥るリスクがあるから取締るのではなく犯罪だから取り締まるのである。本法案の改正に関する報道は各社総じてオンラインカジノは違法であるから取締りが強化されるという風潮で報じていた。しかし、実際は違う。本法案で禁止するのは違法ギャンブルのサイトの開設や運営、違法ギャンブルへの勧誘や誘導、違法ギャンブルの広告等を規制するのである。違法ギャンブルへと至る道中を規制するための法整備である。そもそも本法は3年に一度見直すことが附則で規定されている。ちょうどその時期が来たからオンラインカジノ対策も盛り込んでおいたということ。
オンラインカジノを運営したり、利用することは違法な賭博に関与する行為であり犯罪である。本法を改正することで違法行為へのアクセスを誘導する行為を禁止する。本法の改正法案が成立すると情報通信事業者は警察から要請を受けた場合は違法とされる広告や投稿を削除しやすくなる。本法の改正案の目的はそこにある。オンラインカジノの広告や勧誘などを違法だと明確に規定することで警察は通信事業者に根拠を以て要請できるし、通信事業者も当該広告等を削除する理由として遵法を以て示すことができる。違法なオンラインカジノにアクセスできないようにするブロッキングすることができるようにする法規定を盛り込むことができれば尚のこと良いが現段階では警視庁がまだ検討をしている最中だと言う。アクセスを遮断するという追加的な措置が今後とられる可能性は高い。たとえ広告や勧誘が禁止されてもオンラインカジノへのアクセスが遮断されるわけではない。よって、日本国内から利用することは不可能ではない。
外国のオンラインカジノの規制はどうなっているのか。アメリカは州ごとに違う。ニュージャージー州、ペンシルベニア州、ミシガン州などでは州法に基づきライセンス制を導入し、政府公認のカジノサイトを運営している。一方、ユタ州、ハワイ州などでは全面的に禁止されている。イギリスはオンラインカジノが合法化されライセンス制が導入されている。シンガポールは政府の特別許可を得た事業者以外は原則禁止されている。IRを容認するシンガポールではあるが、オンラインカジノに対しては厳しい対応をしていることから日本と似たスタンスにある。ドイツは一時的に解禁したが現在は禁止されている。カナダはケベック州がライセンスを濫発して350ものオンラインカジノサイトが乱立し規制できない状況に陥っている。
さて、日本には既に競馬や競輪、オートレース、モーターボートなどの公営ギャンブルのみならず、宝くじやtotoなどもギャンブル性のある一種、それに加えてパチンコも法を捻じ曲げて容認されている。さらにはIRの解禁も迫っておりカジノが新たに誕生する。世界最大級のギャンブル大国が日本である。一方でオンラインカジノなどパチンコ以外の民営ギャンブルは厳しく取り締まる。国による「管理」の必要性を重視しているのだろうが、成人以上か以下かぐらいしか管理のしようもない。成人した国民の2.2%がギャンブル依存症を疑われる状況にあるという2022年の厚労省のデータもある。国のギャンブル政策はちぐはぐ過ぎないか。「取り締まるのか、推進するのか、どっちなんだい」と私は言いたい。法案の内容が促進や後押しばかりで不足はあるが法案化できることから進めることは決して無駄ではない、愚公移山を信じるべき。
*海外のオンラインカジノにアクセスすることは可能な状態であることからオンラインカジノを違法とする日本人のアクセスに対して海外事業者による警告や遮断の協力を得る必要があると考える。政府が海外の事業者との連携をどのように考えているのかを窺う。
*海外オンラインカジノ業者への送金やクレジット決済などをストップすることが有効であると察するが金融機関との連携を模索しているのかどうか、協力要請を予定しているのかどうかを窺う。
*IRのような物理的施設でのカジノを推進する一方でオンラインカジノを厳に取り締まるのは何故か、多くの公営ギャンブルが既に存在することから一層のこと物理的カジノもオンラインカジノ同様に禁止すればよいのではないか。
*公営ギャンブルの純利益の総計はいくらか。その使途は主にどのように利用されているのか。
*公営ギャンブルや宝くじを徐々に縮小していけば株式投資などに金融資産の形成になどに一部の資金が向くのではないか。
*公営ギャンブルに興じるのは自己責任であることは当然であるが、ギャンブル依存症などに陥ることも自己責任であるはず。依存症に関わる相談窓口や支援機関などを防止措置の周知やキャンペーンなどに税金を投じるのは自己責任の原則に反するのではないか。
*公営ギャンブルの多くはオンラインで投票できる。コロナ禍以降、投票券の購入はいまやオンラインが大半を占めている。オンラインでのギャンブルは依存症になりやすいと言うがこの状況を政府はどう考えているのか。オンラインでの購入を制限したり店舗に戻したりすることは考えないのか。
*法案提出者は罰則規定を設けなかった理由をご教示あれ。
*海外オンラインカジノへのアクセスを遮断する措置を検討していると承知するが現段階で技術的に可能なのか。可能であればなぜ本法案に盛り込まなかったか。
参考
オンラインカジノ規制強化へ、サイト開設や誘導広告を禁止…今国会での法案提出で与野党が合意 読売新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/ffe4c6854ee643e2dd39f7936bd17488956f73a0
ギャンブル等依存症対策推進基本計画 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gambletou_izonsho/pdf/kihon_keikaku_honbun_20250321.pdf
ギャンブル等依存症対策基本法及び基本計画の概要等について
令和元年9月24日 内閣官房ギャンブル等依存症対策推進本部事務局
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gambletou_izonsho/setsumeikai/dai1/siryou1.pdf
「オンラインカジノ」規制強化へ 今国会中の法改正で与野党が大筋合意 TBS
https://news.yahoo.co.jp/articles/b791c0ada51bca7d3bd4bc8bd8ef7b88d750ddea
超党派の「依存症対策議連」会合 オンラインカジノなど依存症 日テレ
https://news.ntv.co.jp/category/society/c0b2ea689a4a461680be6ca66a95225f
オンラインカジノ「誘導」禁止 与野党、今国会の法案提出で合意 日経
https://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXZQOUA157180V10C25A5000000
オンラインカジノ規制強化へ――最新法案の内容と社会的背景 おおつか公彦
https://go2senkyo.com/seijika/186641/posts/1106112
衆議院・厚生労働委員会/ギャンブル依存症対策を問う 高井たかし
https://takaitakashi.com/archives/45131
オンラインカジノ犯罪を減らすため議員立法の成立に挑戦します。 高市早苗
https://www.youtube.com/watch?v=kS_4Qtc4Ywk
【賭博罪】オンラインカジノへの誘導を違法化へ 高市早苗
https://www.youtube.com/watch?v=8mXUCs8Wxhk
オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!警視庁
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/onlinecasino/onlinecasino.html
オンラインカジノの実態把握のための調査研究の業務委託 報告書 警視庁
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/onlinecasino/jittaityousahoukokusyo1.pdf
オンラインカジノ振り返り(WEB版)/POKKA吉田
https://yugi-nippon.com/pachinko-column/post-70648/
利用者337万人、賭け金1.2兆円の衝撃 政経ダイジェストYOUTUBE
https://www.youtube.com/watch?v=ilSbyBGi_mQ
日本のオンラインカジノ規制の現状 JW
https://note.com/junwatanabe72/n/n5b6e162910fc
公営ギャンブル、ネット購入が8~9割 賭け意識乏しく、依存の懸念
https://www.asahi.com/articles/AST4K3438T4KULLI00JM.html
オンラインカジノ Wiki
カジノ解禁でどうなる?ギャンブル依存症大国日本
0コメント