社会保険労務士法の改正法案について
今日は金曜日、フライデーポテトを買うやん。
行政書士法の改正に続き社会保険労務士法の改正法案が今国会に提出されている。改正する箇所は4点。
第一条が「目的」から「使命」に変わり、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施を通じて適切な労務管理の確立及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与することにより、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上並びに社会保障の向上及び増進に資し、もつて豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に資することを使命とする」とし、全文書き替えられた。社会保険労務士に対して社会保障制度の実務代行者という印象を持っている人が多いがそれを払拭したい意図が感じられる文言である。
次に第二条において「社会保険に関する事項において相談に応じ指導する」という文言に『』書きとして「法令並びに労働協約、就業規則及び労働契約の遵守の状況を監査すること」を含むことを明記した。要するに社労士の仕事は書類を代筆して終わりではないという主張が見て取れる。独占業務の範囲は広い方が良い、という仕業の志向は共通するからありがちなもので違和感はない。監査という言葉を入れたかったというのが本望であろう。
第二条2項では裁判所に出頭して社会保険に関する事項において当事者又は弁護士の補佐人として出頭して陳述できると規定されているが、これまで弁護士のことを「訴訟代理人」と明記していたが「代理人」に変更するとしている。訴訟を代理できない社労士のやっかみであろうか、それとも裁判所に呼ばれるのは専ら訴訟とは限らないからだからか、「訴訟代理人」と表現しても「代理人」と表現しようとどちらでもよいが「弁護士」と表現するのが一番わかりやすいのは間違いない。だが、それは社労士にとって最も避けたい選択であろう。
第二十六条に社会保険労務士の名称に類似する名称の使用制限が規定されている。類似する名称の例示を法に明記することとしている。社会保険労務士に類似する名称に「社労士」が含まれる、社会保険労務士法人に類似する名称に「社労士法人」が含まれる、社会保険労務士会又は全国社会保険労務士会連合会に類似する名称に「社労士会」及び 「全国社労士会連合会」が含まれることが盛り込まれる。そもそも「社会保険労務士会」と「全国社会保険労務士連合会」が類似名称なのではないか。
以上が本法案での改正箇所である。予算措置も必要なく不利益を被る対象も存在しない、他者の権利を制限しないことから本法案には賛成するべきだと考える。
さて、そもそも社労士の独占業務とは何か。労働社会保険諸法令に基づく書類の作成、申請書等の代理提出、申請に関わる行政機関の調査もしくは処分に対し顧問先企業の代理として申し立てや対応が独占業務となっている。特定社会保険労務士にはこれらに加えて紛争解決手続代理業務を負うことができる。案外、独占業務は限られているし、企業の多くは自前で手続きできることがほとんどである。零細企業で総務的な人材がいない事業者の仕事を請け負うことが最も多いのではないかと察するが、実務的な事務が伴う仕事であるが月額2万円から3万円程度契約が多く報酬は多くない。社労士の資格試験は令和6年の合格率が6.9%というかなりの難関試験であるが、厚労省の調べによると平均的な年収は500万円程度と高くはない。公認会計士や税理士や中小企業診断士と比較すると3割以上少ないことになる。
社労士の重要な業務として助成金などの申請の代行がある。着手金を受け取ることはほとんどなく成功報酬として助成金などの10%から20%が得られることが多い。この業務に目をつけたエセ社労士も少なくない。社会保険労務士を語り電話し助成金をエサに詐欺行為を繰り返す者もいる。エセ社労士ではなく社労士資格を持った者による助成金の不正申請も後を絶たない。特にコロナ禍で凄まじい数の申請が行われた雇用調整助成金については後日になって不正が発覚し摘発された事件も多数発生したが、不正の中には社労士が関与したケースも多数見られた。中にはコロナ禍における不正受給の指南が200人にも上った社労士がいた。被害総額は5億円を超えている。エセ社労士は開き直った悪人の行為であるから仕業とは無関係の刑法犯であるが、社労士の不正行為は性善説に則った法規定を根底から覆す行為であり悪影響は広範となる。一概に社労士を批判しているつもりはないが、死後言う全般に言えることとして倫理観、道徳観、正義感、使命感をどのように育んでいくかが課題である。そうした観点から本法案の改正は理に適っており、社労士の使命について、類似名称の使用制限の明示による詐欺防止が含まれている。内容としては最低限の改正だが仕業のモラルの向上に繋がればと期待する。
*社会保険労務士とは別に民間資格として労務管理士という認定資格が存在する。厚労省は把握しているか。混同されやすい資格(類似名称に近い)であると思うが厚労省の見解を伺う。
*就業規則の作成は社労士の業務とされているが行政書士ではそれがダメな理由を問う。
*社労士会への登録をしなければ試験に合格しても専門業務を行えないが、入会金5万円、年会費9万6千円は高額に過ぎないか。
*新人の社労士は行政協力の仕事を受けることが多いが、同じ仕事でも発注する行政体によって金額が違う。年金相談センターやハローワーク、市役所などで行う相談員などの仕事は同額で統一するべきではないか。職安での相談員は5-6千円、年金センターでの相談員は高いところで2万円にもなると聞く。相応の理由がない場合は報酬に対する一定の基準を設けるべきだと考えるが如何に。
*AI技術の発達とともに社労士をはじめ行政書士などの一部の業務に対するニーズが減少していくと思われる。社労士、行政書士、ファイナンシャルプランナー、中小企業診断士など既存の仕業資格の横断的な関わりを検討し新たに複合的な仕業の創設(組み合わせ)を検討してはいかがか。
参考
社会保険労務士法の一部を改正する法律案 法案
労士の平均年収を条件別に解説!収入アップを目指すための3つのコツも紹介
とうかいマガジン
https://www.tokai-sr.jp/media/finance/syaroushi-yearly/
コロナ雇調金5億円詐取か、社労士を逮捕…従業員数人を200人に水増し指南か 読売
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230629-OYT1T50080/#google_vignette
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