犯罪の減少は本当に警察のおかげなのか

けいそつ?けいさつ・・・。

 7月15日、愛知県警中警察署が悪質なホストを逮捕した。NHKの報道によると「名古屋市のホストクラブの経営者が、未払いの飲食代の「売掛金」を回収するために女性客の自宅の前で声を荒げたとして、風俗営業法違反などの疑いで警察に逮捕されました。愛知県警によりますと、悪質なホスト対策として改正された法律で新たに禁止された、支払いのために客を脅して困惑させる行為でホストが逮捕されるのは、全国で初めてだということです。」

とされる。

 今年5月20日に風俗営業法の改正案が全会一致で成立した。そして、翌6月28日に施行された。上記の事案の容疑は法の飲食店の遵守事項にある「接待飲食営業を営む者は、その営業に関し、客に注文等又は料金の支払等をさせる目的で当該客を威迫して困惑させる行為や、客に対し、威迫し、又は誘惑して料金の支払等のために当該客が法令に違反する行為により金銭を得ること等を要求する行為をしてはならないこととし、これらの行為をした者に対する罰則を設けることとする。」に違反している疑いであろう。

 逮捕されたホストクラブ「Asteria」の経営者でホストの尾石康雄容疑者(36)は29歳の女性客に対する売掛金約100万円を回収する為に女性客の自宅を訪れてドアの隙間から声を荒げて支払いを迫ったことが明らかになっている。

 料金の支払いを促す行為は民事であるから警察は介入できない。法改正によって警察事案にできるのは料金の回収行為が脅迫まがいである場合や支払いの遅れなどを理由に客にペナルティを課すような行為があった場合は取り締まることができるようになった。上記のようなケース以外にも売掛金の回収を目的に脅したりマインドコントロールしたりして性風俗店で働かせたり、斡旋して見返りを得たりする行為を禁止している。また、恋愛感情にかこつけて高額な飲食をさせたり、虚偽の説明を行った場合は公安委員会が営業停止の措置をとることができるようになった。

 こう言ってしまうと元も子もないが、今回の愛知県警中署の事案は脅迫行為に外ならず既存の刑法で取締りが可能なのではないか。脅迫罪、侮辱罪、名誉棄損、不退去罪などである。店と客の商取引とは関係なく、行為自体を俯瞰的に判断することで警察は取締りの執行が可能なのではなかったのか。風営法の法改正は必要性と有効性は認める。しかし、法改正がなければ取り締まることができなかったのかというと疑問符が付く。

 この20年で犯罪は激減している。防犯カメラの普及だけでなくモラルも向上しているのだろう。警察は犯罪の減少を勝ち誇るが、それは本当に警察力が増したことによる成果なのだろうか。警察力も無きにしも非ずだが実態は少子高齢化による若年層の人口減少にあるという見方も多い。穿った勘繰りかもしれないが、警察は警察の成果として犯罪検挙数を減らす為に国民からの相談や届け出を蔑ろにしてきたのではないか。正式に受けることなく、被害者の訴えをうまく言いくるめて被害届や告訴をしないように仕向けてきたのではないか。それは絶対に違うという人があるなら一度警察に被害届や告訴状を持って行けばわかる。よっぽどのことがない限り受理することはない、110番以外で警察を動かすのは至難の業であることがわかるはずだ。

 私は1年ほど前に貸りていた駐車場に置いていた車を2台同時に盗難にあった。駐車場を管理する者が盗んだという多くの関係者からの証言もあり地元の警察署に盗難届と被害届を出しに行った。警察は「盗まれたとは断定できない」と言ってなかなか被害届を受理しなかったが多くの証言や周辺状況から盗まれたことは明らかであり、嫌々ではあるものの約1か月後に被害届を受理した。実は犯人は最初からわかっていた。駐車場の管理人である。管理人しか持っていない車のスペアキーが無くなっていたからだ。私が管理人のところに行くとその人物は庭木の剪定鋏をもって飛び出してきた。私はとっさに身の危険を感じて自分の車に閉じこもった。私が警察に相談したことを聞きつけた管理人が逆恨みして私に危害を加えようとしたのだ。このことは即座に警察に連絡して伝えている。それにも関わらず警察は一切動かない。大きな鋏を持って私を追いかけた管理人に会うことすらしない。当然、盗難にあった車を探すこともしない。そういえば東京都内の某警察に詐欺の被害届を出しに弁護士同伴で行ったことがある。対応に出た警察官は私の被害額が1000万円だと知ると額があまりに少ないから捜査することはできないと言った。数億円をだまし取られた人でもなかなか被害届は受け取らないとも言った。もし被害届を受け取っても着手するには数年先のことになるから受け取る意味がないとのこと。もはや警察と会話しても時間の無駄と思った。それこそが警察の思うつぼだったのかもしれない。

 経験上、警察は出来る限り事件にすることを避ける。面倒だからというのもあるが事件の数を増やしたくという気持ちが強いのだろう。事件の増加は警察の弱体や怠慢を問われかねない。警察も役所機能の一つ。犯罪件数の減こそが警察の評価に繋がると信じてやまないのだろう。その短絡的な思考が警察に蔓延るのは行政のみならず政治の問題である。犯罪を犯罪として取り扱わなかった警察官や警察署の処分規定が必要だと考える。ただし、一定のバッファを設けたうえでの話であるが。「靴を度りて足を削る」というが靴のサイズに足を合わせるのは困難。警察指向と思考の改革を改めて求めたい。

坂本雅彦ホームページ

坂本まさひこ  作家 国会議員秘書

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