高市早苗氏とイタリアのメローニ首相②

ぴったイタリア。

 メローニ氏は首相に就任後、真っ先にブリュッセルのEU本部を訪問している。10年以上にわたりEU各国が移民問題に悩まされてきたが、メローニ氏はEUの同意を得るなり北アフリカを立て続きに3回訪問、移民出国を止める協定の締結にこじつけた。2024年1月から8月の調査では海からの上陸移民数は前年同期比で63%も減少している。一方で正規の労働力して受け入れる移民に関しては3年間で45万人に拡大する方針である。つまり、メローニ氏は一方的な排外主義的な政策を行っているのではなく、あくまでも不法移民に対する対応を厳格化してきたにすぎない。メローニ氏の対EUとの親和性、移民政策を鑑みるとイタリア国民が抱いた極右民族派の面影はない。メローニ氏は国民を裏切ったわけではなく粛々と公約に取り組み実現しているだけである。EUからの巨額融資を引き出し、財政再建の足掛かりをつけ、不法難民を大幅に減らし、雇用は増大し、GDPをプラス成長に転じさせた。

 日本においては岸田政権に続く石破政権でも混迷は続く。政府が続ける緊縮財政下で輸入物価やエネルギー価格が高騰、実質賃金は3年連続マイナス、社会保障など国民負担率の増加、中国に対する10年ビザ発行、クルド人の激増、外国人運転免許証切替優遇問題、外国人による土地取得問題の放置、メガソーラー設置による自然破壊問題の放置、夫婦別姓問題など多くの問題が解決には程遠く手をこまねいてばかり。当然、このような政権では国民の信頼は得られない。

 そうした状況下で行われた参院選では石破総理率いる自民党の票が一気に新興保守政党である参政党や日本保守党に流れることとなった。躍進したのは極右と言われがちな参政党と旧民主党の保守派という印象が強い国民民主党。自民党は約1280万票、国民民主党は約760万票、参政党は約742万票であり、国民民主党と参政党の票を足すと自民党を上回る結果となった。これだけ左傾化してきた自民党を嫌い、中道右派の国民民主党と右派の参政党に票が集まったのは、国民の民族意識が高まっているからであろう。

 そこで注目されるているのが自民党の高市早苗氏である。自民党の総理候補の中では最も保守的な主張が目立つ候補者である。イタリアのメローニ氏と印象が被るところもある。高市氏の主な政策は、自衛隊を自衛軍に、皇位継承は男系男子、自由貿易推進、累進課税の廃止、防衛費増額、憲法9条削除、積極財政、核融合炉や地下原発の推進、日米地位協定の見直し、村山談話の変更、外国人参政権に反対、移民受入れに慎重、選択的夫婦別姓に反対などである。国家観は民族主義的な色合いも見せる。

 現状の日本とイタリアの政策は図の通り大きな乖離がある。

 日本国内でもメローニ氏が首相に就任した当時のように右派の台頭が目立つ状況にある。よって高市氏が自民党総裁に選ばれ首相の座に就く可能性がないわけではない。高市氏が首相になるとイタリアでのメローニ政権下の政策に極似する。高市氏がメローニ氏の政策のみならず行動原理も似た場合は極端な民族主義路線をとることはないだろうし、保守とリベラルの対立による分断も避けるだろう。それは首相の座という目的の一部を達したことによって保身の為の転向ではない。少数与党の代表として上手に政権運営を果たす為という大義があるからだ。自民党が国会で圧倒的多数を保持していた場合は融和的な政権運営なんてありえないし、むしろ行き過ぎたナショナリズムが台頭する可能性もある。政党が群雄割拠し、比較第一党が少数与党である現状の政治情勢にあって高市氏が右派に偏った政権運営に走るとは考え難い。そういう意味では高市政権が誕生したとしてもメローニ氏のような左右のつなぎ役を務める可能性もあるし、それができることがリーダーシップというものかもしれない。

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