最低賃金の引き上げが雇用を減らすかも

雇用の効用?

 今夏の参議院議員選挙では野党が挙って賃上げ、もしくは減税、またはその両方を主張して国民の支持を得ようと躍起になっていた。少なくとも国民民主党は消費税減税と居特税控除の引上げ、ガソリン暫定税率の廃止などを公約に掲げ昨年の衆院選に続いて躍進を遂げた。電機連合、電力総連、自動車総連、UAゼンセンなど大手の労働組合を支持母体とする国民民主党は昨年の衆院選以前は変わらず賃上げ一辺倒の公約を掲げてきたのだが国民の反応はイマイチだった。それもそのはず、賃上げは政治家の努力だけでは進まない、どちらかというと経営者側に負担をお願いしないといけない政策である。一方、減税による可処分所得の拡大は政治家の立法によって可能である。政党が掲げる公約や政治家の力によって実現可能なものでなければならないと気付くのに国民民主党は5年以上かかっている。それでも自助努力に拘る公約に切り替えた直後に躍進が始まったのだから遅ればせながらビンゴであった。

 一方、与党自民党は2029年までに最低賃金1500円にする方針を示している。最低賃金の引き上げによる賃上げは労働組合が目指す賃上げとは違う。労使で協調するのではなく強権的に使用者側の負担を増大させる政治的行為である。最低賃金は最低であるのだから労働市場の賃上げをリードするべきではない。あくまで下支えであるべきだ。石破内閣の意向を汲んで厚労省審議会は8月4日に最低賃金の過去最大幅となる63円を引き上げる方針を決めた。これによってすべての都道府県で最低賃金が1000円以上となる。自民党は「賃上げこそが成長戦略の要という基本的な理念」などというが国民民主党はそうではなく国民負担の軽減こそが経済活性化に繋がることに開眼し一気に支持を広げた。つまり、自民党は国民ニーズを掴み切れないどころか逆進的な政策を打ち進めてしまっている。

 企業経営にとって売り上げに見合った人件費率でしか採算を確保できない。飛躍的な売上の向上が見られない場合は最低賃金が上昇した場合は労働者数を減らされるか労働時間を絞られることが予想される。効率性や生産性を向上させて労力負担を減らすようになる。労働者にとって働く機会が減少することによって労働環境が不安定になる。賃上げと引き換えに働くチャンスを失っては本末転倒だ。今、政府がするべきことは企業が十分な収益を確保すするためのバックアップを強化すること。設備投資などの後押しも欠かせない。そして、地域間格差の解消に関しても最低賃金ランク区分の見直しなどで対応するべきだ。

 頭ごなしに最低賃金の引き上げを否定するつもりはないが、減税による経済成長を優先する方がわかりやすいしモチベーションもアップしやすい。少数与党による政権運営であるからこそ、お互いの公約の良いところをバランスさせて欲しい。

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