コロナに関わる保健所等の体制について(参議院浜田聡議員の調査室への質問に対する回答のご報告)

梅雨がやっと明けて東京も遂に夏本番を迎えました。今年の夏はお祭りも海水浴も自粛ムードではありますが、青空が高く広がるだけで気分も晴れ渡ります。

そんな中、今年の春にはコロナウィルスはインフルエンザ等と同じく気温が高くなるとその感染力を失い終息に向かうのではという説もありました。ところが7月下旬以降というものコロナウィルスは再び感染蔓延の勢いを吹き返し連日数百人の感染者が報告されるようになりました。円滑洒脱と言いますか、なかなか思い通りにはいかないのが世の常なのでしょう。正確な情報を得て、社会の一員として責任ある行動を心掛けて行こうと思います。

さて、参議院浜田聡議員が参議院調査室に下記の調査依頼をされて回答を頂戴しましたので僭越ながら浜田議員に代わり私よりご報告をさせて頂きます。


浜田議員質問1

・東京都は、感染者数の発表の際に、検査件数や陽性率を合わせて発表しているか否か?

参議院調査室回答1

 東京都が毎日公表しております報道発表資料には、新規患者の報告件数と検査実施件数(検査から結果が出るまで3日程度要するため3日前の数値)の記載はございますが、陽性率の記載はございません。

下記資料:東京都第580報「新型コロナウィルスに関連した患者の発生について」

検査実施件数の但書*2に検査結果と本日の報告数が一致するものではない。(陰性確認も含む)とある。よって、三日前の検査実施件数に対する感染者発生総数の割合がそのまま陽性率だとは言い切れないとうことを意味していると理解しています。

 一方、毎週、専門家によって行われているモニタリング項目ごとの状況分析の中では、陽性率等についても触れられており、7月15日の都知事の記者会見の際には専門家からこれらについて発言がなされております。

下記資料:東京都福祉保健局7月29日時点のモニタリング項目の分析総括コメントについてhttps://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/monitoring.html

確かに東京都福祉保健局の上記においては陽性率を明記している。ただし、感染状況を知らせる項目では医療供給体制に関する分析項目の一つとしての扱いである。

下記資料:7月15日都知事記者会見:会見内容書き起こし

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/governor/governor/kishakaiken/2020/07/15.html

検査体制と陽性率の推移に関するコメントです。PCR検査の実数が増えると陽性率も上がっていることから検査体制の強化が必要だと認識の表明です。


下記資料:2020年7月15日毎日新聞記事より

https://mainichi.jp/articles/20200715/ddm/001/040/138000c


上記、記事によると公表内容を訂正するに至った東京都でHER-SYSの利用が進んでいないとのことです。東京、大阪、神奈川は独自のシステムを使っていることからシステムを移行することに時間がかかっているとするが、それを慮っても未だにFAXによる報告を集計しているというのは進捗が悪すぎると思います。


浜田議員質問2

・新規感染者数や検査件数、陽性率などの数字を集めて算出する際に、紙ベースで集める数字を手で計算しているという話があるが、事実か否か?


参議院調査室回答2

 東京都における新型コロナウイルス感染症患者公表数の修正について公表された際の報道発表資料に、これらの背景には「発生届についての紙ベースでの管理など、情報管理のしくみにも不備があったと考えられる」との記載がございます。

 新型コロナウイルス感染症患者公表数の修正について(第332報):

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/05/12/12.html

 また、政府は5月から「新型コロナウイルス感染症等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」の運用を開始しておりますが、特別区の中にはHER-SYSへ の移行準備が整っておらず、依然としてファックスによって感染者数の報告を行っている 区もある等の報道もございます。

下記資料:5月11日新型コロナウイルス感染症患者公表数の修正について(第332報)

↓ 上記の問題解決のために5月29日から全国でHER-SYSを順次利用開始


下記資料:厚生労働省HER-SYSについて


上記、HER-SYS(感染者等情報把握・管理システム)によりパソコン・タブレットで入力が可能となり保健所がFAXによる集計をおこなう必要が無くなりました。


浜田議員質問3

・感染者が増えてきて保健所が忙しくなっていると話を聞いています。人員不足がわかる資料などがあれば教えていただきたく思います。

参議院調査室回答3

 保健所数及び保健師数の推移について、資料を添付いたします。

下記資料:保健所数推移、参議院調査室作成

保健所の数は年々減少している一方で保健師の数は増加傾向にあります。


下記資料:厚生労働省、平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況より

保健師は増加傾向になるものの就業場所は市町村の約56%と圧倒的に多く保健所は約15%の8100人にとどまっています。しかしながら、調査室の回答からは公的に発表されている数値から保健所の人員に不足が発生しているという裏付ける資料は見当たりません。


全国保健所長会が保健所の新型コロナウイルス感染症に関する活動内容等についてのアンケート結果を公表しております。

下記資料:全国保険所長会、「COVID-19に関する緊急アンケート」より

上記より新型コロナゥウィルス感染に関わる保健所への相談に対して中心的に対応しているのは保健師、医師、薬剤師がほとんどだとわかります。


また、保健所の人手不足等に関する記事、会議録も併せて送付いたします。

下記資料:2020年7月12日日経新聞より

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61425070R10C20A7EA2000/


都内の保健所の中でも新宿区の保健所は特に逼迫しているようです。繁華街が立地する地域の検査を徹底しています。それに伴い感染者数の急増し新宿区の保健所では人手が足りなくなり都などから数十人規模の応援を得ているようです。保健所から医療機関への連携が取れない原因として人員不足も一因だと指摘されているようです。行政のスリム化を進めてきた行政改革は必要だと考えますが、一方、単純な人員削減と業務の縮小に留まるのはなく、運営の効率化と外部委託をバランスした改革が望まれると考えます。


NHKニュース:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200711/k10012509651000.html


上記、NHKニュースWEBによると相談対応に明け暮れて、感染の状況や分析やその統括など行政が対応や処置を決定する判断材料を整理するまでには至らないことを鑑みて東京都北区の場合は近隣に所在する帝京大学に情報の整理や分析を依頼し協力を得ているという。

参議院調査室から国会答弁議事録の提供がありました。

国会における質疑は資料が大量でありますので私の方で要約して下記に記します。


令和2年6月11日 参議院予算委員会21号より

加藤勝信国務大臣の言

「都道府県、保健所設置市と厚生労働省が密に連携し各保健所がしっかりと機能を果たせるようにしたい」

「IT化することで入力等の負担も軽減してきた」

「積極的に疫学調査に必要な人員の雇用に係る経費を助成してきた」


令和2年6月10日 衆議院予算委員会27号より

加藤勝信国務大臣の言

「保健所の縮減は市町村との役割分担と機能強化を進める中で行ってきた」

「安倍政権下で保健師の数は増加している」

「HER-SYSをすでに稼働しその機能を発揮している」


令和2年5月25日 参議院決算委員会6号より

加藤勝信国務大臣の言

「身近な保険サービスは保健所から市町村に移譲し、保健所は難病や疫病や感染症に関わる機能を有するということで広域的、専門的に施設整備の充実を図ってきた。所管区域は二次医療圏と概ね一致している」

「保健師の増員に関して、退職者の再雇用を含めた非常勤職員の雇用に係る経費を助成する。IT化を進めることで業務の効率化と作業負担の軽減を図っていく」

「地域衛生研究所の法的な位置づけ、保健所の感染症法上の位置づけに関しては今後において議論をすべきだと認識している」


令和2年5月14日 参議院厚生労働委員会11号より

加藤勝信国務大臣の言

「市町村、都道府県に対して組織内での応援派遣を、さらには医師会には相談業務等の委託をお願いしている」


令和2年4月16日 参議院厚生労働委員会9号より

宮嵜雅則政府参考人の言

「全国知事会に対して保健所の体制整備について保健衛生部門だけではなく他部門も含めて全庁的に取り組むように拡充するように加藤大臣から直接要請した」


令和2年3月18日

吉永和生政府参考人の言

「帰国者・接触者相談センターの業務の全部または一部を医師会や医療機関に外部委託を可能としました。保健所において継続的に検査が行われる体制を確保していきたい」

以上より、浜田議員のお聞きになられている保健所の人員不足がわかる公的な資料はありませんが、参議院調査室からは本年における国会質疑より保健所に関する答弁資料を賜りました。



以上、答弁の中で大臣も保健所の現状認識をお持ちのようでIT化や外部委託や助成、医師会や市町村首長への要請など種々の措置を講じて来たことは間違いありません。

その中で議論が分かれるのは保健所の逼迫を“今回の新型コロナウィルス感染症の蔓延に対する一時的な対処“として議論しているのか、それとも“保健所は年々縮減されており恒久的な体制強化が必要”と考えているのかで大分されています。議論の前提条件に相違がある状況では有効な議論にはならないのは当然のことと思います。

以上、ご拝読頂きましてありがとうございました。

(下線部分は私の責任の下で記載しました)

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