安倍首相の辞任と石垣のりこ議員とマスコミについて
2020年8月28日に突如として安倍晋三首相が辞任を表明しました。佐藤栄作内閣を凌ぐ7年8か月にも及ぶ長期政権でした。2006年から2007年に率いた第一次安倍内閣も大きな期待を寄せたれたにも関わらず突如として辞任されたこともありました。安倍首相を蝕んだ病気とは潰瘍性大腸炎です。不治の病として難病指定を受けています。下血を伴う下痢と腹痛が起こるということです。2007年の辞任時には突然の政権の投げ出しだという批判も受けました。直前での参院選での大敗をメディアに実質的な辞職理由とされたことでそのような批判が集まったのでしょう。しかし、実際には難病に侵されていたことこそが辞任理由なのです。不治の病に侵されて戦うことは重責である総理の職務を遂行するには厳しいことだということは容易にわかるはずです。それにも関わらずマスコミは当時の安倍晋三首相の辞任を一様にバッシングしていました。その背景には選挙に大敗したことだけではなく自殺した松岡農相の疑惑や公認の赤城農相の問題、久間防衛大臣の失言など内閣内での不祥事が相次いだことも影響していると思われます。当時の安倍バッシングには国民からの異論や反論は多くはありませんでした。ところが、2007年に続いて二度目のとなる今回の安倍首相の辞任においてはそのようなバッシングは凡そ見られませんし、そのような風潮すら感じません。テレビも新聞も雑誌もインターネットも国民に視聴されたり、購入されたり、読まれた上で支持されないと市場原理が働いて淘汰されていきます。つまり、止む無く風潮に流される、もしろ、世論の空気を忖度することを良しとぜざるを得ない立場にあるのは確かなのです。毎日のように安倍バッシングを繰り返していた某新聞社までも今回の辞任劇には同情的な色目を寄せているような状況です。そのような中で空気の読めない野党議員が登場しました。参議院宮城選挙区選出の石垣のりこ氏だ。石垣氏は自身のTwitterで「大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物を総理総裁に担ぎ続けてきた自民党の選任責任は厳しく問われるべきです。」とコメントを公開。それを見たツイッター民が石垣氏のツイートを拡散すると共に批判をし始めました。さらに、その状況を知ったメディアなど報道各社も石垣氏のツイートに非難が集中している状況を報じ始める。確かに石垣氏のツイートは全くもって共感できる内容ではありませんし、難病と闘う多くの人々を愚弄していると捉えられてもしょうがない内容です。難病で仕事を辞めることはその人物の癖なのでしょうか。そして、難病を持った人物が要職を辞任することでその任命者は非難されるべき責を負うのでしょうか。石垣のりこ議員の発言は憲法の第22条に定める経済的な自由権を犯すかの如き主張に思えました。併せて、憲法第14条における政治的、経済的、社会的関係において差別されないという法の下の平等を脅かす発言にも感じました。難病を持つことで社会から疎外されてはなりません。政治家たるものの使命はそういったハンディキャップを持つ人たちに寄り添いノーマライゼーションの理念の下に様々な施策と啓蒙を奨めなければならない存在のはずです。そのような観点からも石垣のりこ議員の政治的な資質に疑問を抱きましたが、マスコミにも多少の疑義を持ったのも事実なのです。つまり、石垣のりこ議員までの露骨な表現では無かったかもしれませんが、第一次安倍政権時の辞任表明時には「政権の投げ出し」だと各社が挙って安倍晋三首相を非難したのです。その際にも安倍首相は難病である持病の悪化によって職務を遂行することに不安を抱いたことを理由に辞めているのです。当時はまだSNSが普及する前ではありましたが、現在では当時のマスコミが平気で行っていた不道徳にも思える非難と同様の行為を現在のマスコミは集中砲火的に石垣のりこ議員に浴びせているのです。石垣のりこ議員の発言は当然に不適切なのですが、それを叩くマスコミにも違和感を感じているのです。政治とは争点があり対立があります。与野党はその鬩ぎ合いの中に存在します。しかし、政治には弱者の救済という側面もあります。その理念こそが究極の平和主義だと言えるのかもしれません。与党であったり野党である以前に善悪正邪の普遍的な判断基準となる倫理観を持つ一人の人間であることを意識して頂きたいと思います。
さて、安倍政権の実績を少し紹介したいと思います。頻繁に言われるのが株価についてです。日経平均は民主党政権時代の低迷から飛躍的に回復しました。8500円程度から24000円以上にもなりました。株が上がっても給料は上がらないという嘆きも聞かれましたが、企業が息を吹き返す切っ掛けになったことも事実です。2012年に比べて自殺者は約2割減っています。そして、完全失業率は半減して有効求人倍率も2倍に増えました。女性の就業者数も増えました。企業の経常も50%以上増えています。公的年金の運用益も飛躍的に増えました。もちろん、税収も20%以上アップしています。こうした各論を鑑みると素晴らしい実績と言えるのではないでしょうか。方や、総論で評価するには国民の実際の生活感と実績値に乖離が見られることから決して良い評価はされていません。増税による国民の実質的な手取り収入は減少していることも否めません。また、国民の憲法に関する議論にも一石を投じました。少なくともその是非はともかく憲法に関して改正する姿勢を具体的に示したことは政治家として評価されるべきだろうと思います。その他にもTPPもアメリカの離脱によるFTAに発展する可能性もあったが安倍首相はうまくリーダーシップを発揮できたと考えます。オリンピックの誘致にも成功し首都圏の不動産や観光産業は活況を呈しインフラ整備やリノベ投資も一気に進みました。また、国家戦略特区や構造改革特区も進めてきました。外交においても日米安全保障条約をより強いものとするべく集団的自衛権についての解釈を改めました。普天間基地移転問題ついても民主党政権下で停滞していた辺野古での建設に関して着工にこぎつけています。治安に関連して組織犯罪処罰法に関してテロ等準備罪を創設しました。また、特定秘密保護法、カジノ法の成立、漁業法、入管法の改正を行いました。教育に関しては道徳を教科とすることでモノや金銭等に囚われることのない価値観を教導しました。労働に関しても働き方改革関連法が成立しワークライフバランスが提唱されました。消費税は1度の延期の後に10%に増税されました。その中で他国では一般的である軽減税率を採用する品目も新たに設定されています。歴史観としては河野談話の内容について改めて検討する余地があるとしました。靖国参拝については英霊のご冥福をお祈りすることは世界各国の首脳の姿勢であり、恒久平和への誓いであるとしており、海外からの批判は内政干渉であるとしていましたが、第二次安倍内閣発足以降は参拝を控えていました。その他にも実績は数々ありますが、その反面、桜を見る会や森友学園問題で疑惑が追及されることもありました。是非はともかく安倍政権は自身の政治信条を容易に曲げることなく議会制民主主義のルールに則り、その政策を推し進め実現してきたことには評価と敬意を払うべきだと思っています。恐らく安倍首相の念願であった憲法改正までは叶わなかったことは心残りになるでしょうが、その議論に一石を投じたことは間違いのないことで独自憲法の制定や自衛隊の位置づけなどに関しても具多的な憲法論議として機能する状況が近づいたように思えます。私は国家にとっても私にとっても安倍政権下の7年8か月は漸進して来た有意義な年月であったと感じています。そして、評価はそれぞれであろうと思いますが安倍晋三氏は歴史上の偉人の一人であることは否めないと考えます。
拙い寄稿では恐縮です。安倍晋三氏の歩みを讃えると共に療養の後に体調を取り戻され再度ご活躍されますことを祈念申し上げます。
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