教諭による現場の声と文科省の調査について(参議院浜田聡議員の調査室への依頼に対する回答)

今年も早いもので今年も9月になりました。朝夕の気温が随分と穏やかに感じる今日この頃です。日中は晴れたり曇ったり、曇ったり晴れたりして、気まぐれな空模様が天邪鬼のように思ったりもします。

さて、参議院浜田聡議員が参議院調査室に調査を依頼されて回答を頂戴しましたので、僭越ですが私よりここにご報告させて頂きます。

下線部分は加筆しましたことをご了承ください。


浜田議員の質問

1.文科省が教諭を対象に行うアンケート(調査)の概要を知りたいです。

2.上記アンケートの回答は管理職や教育委員会に検閲されている可能性はあるか?

3.教諭の現場の声としての意見を文科省に直接伝える手段は何があるか?


下記写真:富士通ブログ2014年11月17日

参議院調査室の回答

1.文科省が教諭を対象に行うアンケート(調査)の概要

  文科省が学校に対して行う定期的な調査26件のうち、

  教諭を調査対象に含むものは次の2つでございます。

 (1)下記資料:学校教員統計調査(3年ごと)【資料1】

https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/gaiyou/chousa/1268564.htm

所謂、国勢調査の教諭版のようなものにて文科省からの統計的な一方通行の設問に終始しています。


 (2)下記資料:学校における教育の情報化の実態等に関する調査(毎年)

    https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1420641.htm

 教員の自己分析を基にICTの活用について深度を調査しています。


また、上記の定期的な調査以外で、教諭を調査対象とした主な調査は次のとおりでございます。

 (3)下記資料:OECD国際教員指導環境調査(TALIS)(平成30年)

    https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/1349189.htm

国際的な教諭の自己分析と勤務状況を統計しています。各国と比較して勤務時間は最も長いが、他国と比べ生徒と過ごす時間が不足していると感じている教諭が多いことがわかります。


 (4)下記資料:すべて教員勤務実態調査(平成29年度)

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/27/1409224_004_3.pdf

学内での滞在時間は実に長くなっています。7時間45分労働で45分休憩が基本です。教職員給与特別措置法で原則残業は課さないとされています。

若年者の教員が増えています。経験が浅い教員が増えていることが勤務時間が長くなる主たる要因になっていることは間違いないと思います。若い教諭が増えることで上司となる経験の長い教諭もその指導に労力と時間を費やすことで負担が増していることも考えられます。

持ち帰りが減って学内勤務が増えていることから、先輩教諭から若年教諭への指導や伝達する必要があることが増えているのではないでしょうか。それらは持ち帰りには出来ないことですのでやむを得ないことだと思います。つまり、持ち帰ると解決しない事項が増えて学内勤務が延びるということを現わしていると考えます。

教諭のストレスですが男性より女性の方が多く感じているようです。もちろん、勤務が長くなることが続いたり、経験のない部活動の顧問になるとストレス要因になります。


 (5)下記資料:小学校外国語活動実施状況調査(平成26年度)

   https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1362148.htm 

小学校5年6年で行われる外国語教育ですが半数以上の教諭が自身の指導力を課題に挙げています。奥ゆかしい日本人らしさの現れでしょう。2020年からは3年生から全国で開始されます。教諭の専らの負担は教法の開発と授業の準備ではないでしょうか。これも時間的な問題であり数年を経過することで相応に負担が減少すると思います。


2.上記アンケートの回答が管理職や教育委員会に検閲されている可能性

新聞や雑誌検索をいたしましたが、特にそのような記事は見当たらず、実態については不明でございます。

  「1.」の調査のうち、調査方法が公表されているものを見ますと、(4)は「教員調査票については、回答の秘匿性を担保するため個別封筒より回収を行った」とあり、個別封筒で回収されていましたが、(1)は「市町村教育委員会は、提出された調査票を審査・整理のうえ・・・」とあり、教育委員会を経由しております。

(4)の教員調査票は所謂実態調査のような内容となっており日教組やその他組合とのサンプル数がはるかに違う信用に得る統計だと思います。教諭にとっての負担はその都度の負担と経験の長短による負担の大小があることが現れていました。

3.教諭の現場の声としての意見を文科省に直接伝える手段

(1)文部科学省に関する御意見・お問い合わせ窓口案内

  https://www.mext.go.jp/mail/

  上記から、文部科学省にメールで意見を送ることができます。

  「御意見・御要望」に対して回答はいたしませんが、今後の文部科学行政の参考とさせていただきます」とのことです。

教諭を含む広く国民の意見や要望を送ることができる窓口であり特別に教諭に対して開かれた窓口ではありません。

(2)パブリックコメントの提出

  https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public

 募集中の案件であれば、上記から、パブリックコメントを提出することができま

す。一例として、以下のリンクは、高大接続改革の進捗状況に関してのパブリックコメントの結果でございます。

https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000899&Mode=3

  こちらもパブリックコメントであることから教育の現場の声を吸い上げる窓口とは限らず浜田議員の質問の意図とは違う制度と思われます。

(3)Web意見募集

 現在、文部科学大臣の下に置かれた「大学入試のあり方に関する検討会議」が

Webで意見募集中です。

  https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/mext_00032.html

  こちらも限定的なテーマを設定された意見の募集であり教育の現場の声を届けるには狭義であると思います。少なくとも教諭からの意見を目的とした機会ではないことは確かですので浜田議員の調査依頼の意図には沿わないように感じます。

(4)提言の発表

 提言を発表している教職員組合やグループがございます。


  下記資料:東京新聞2017年11月7日より

  【教員ら「部活負担軽減を」教員の長時間勤務が深刻化しているとして、中学、高校教員らのグループが6日、東京都内で記者会見し、教員の授業準備や休憩時間を与えたり、部活動指導などの負担の軽減をしたりすることを求める緊急提言を発表した。提言内容は「教員の働き方改革」を議論している文部科学省の中央教育審議会特別部会に送ったという。提言では「部活動は土日祝日は禁止し、平日は週3日まで。それ以上は外部団体に委託を」と要望。原則残業は課さないとしる教育教員給与特別措置法についても「破綻している」として改正を求めている。】


 上記の会見を行ったのは教員7名で構成する会でありその中には元職も含まれています。現職は3名であり匿名での参加です。この他にも日教組が類似した要望を行っているます。各自治体の判断で2021年4月より一年単位の変形労働時間制を導入することが可能となっています。しかし、私には変形労働時間制を導入することで学期中の労働時間がむしろ増えてしまわないかと心配に思います。正規の時間の延長はあってはならないのであって、既存の業務の削減に総合的に取り組まない限り抜本的な解決の糸口は見いだせないと思います。

とはいえ、政府は教員の負担軽減の為に教員が要求していた部活動指導員を制度化し、その導入を勧めています。「部活動指導員」とは、学校職員であり、顧問として技術的な指導を行なうだけでなく、生活指導や保護者への連絡、年間計画の作成、事故が発生した場合の対応も任されています。そのため、「外部指導者」と違い顧問がいなくても生徒の大会などに引率することも可能です。つまり、教員にとっては部活に関して多くの部分を任せられるため、休める時間が取れるようになる、という目論見のもとで現場の要望に沿って導入された制度であったはずです。ところが、この制度は実際には現場で導入されることは少なく限定的です。

 なぜ、この制度が広がらないのか、受け入れられないのかが不思議です。現場の声によって出来た制度であるにも関わらず広がっていません。考えられることは、部活動は文化活動やスポーツ活動の研鑽を図るだけではないということです。教員も生徒も部活を通じて教室では見られない生徒の一面を把握したり、部活を通じた目標の共有も可能となるのです。つまり、部活で築いた人間関係を土台に授業で指導することが可能になります。部活動指導員制度が爆発的に広がらないのは、熟練した教員こそ、授業だけではなく部活動においての生徒達の成長を期待できることを経験値として認知しているのでしょう。ただし、その分野や競技に経験のない部活の指導を任せられた教員にとっての負担は計り知れないので、顧問の適任者が見当たらない部活動については部活動指導員制度は救世的な制度であることは紛れもないと思います。

 最後までご拝読賜りありがとうございました。

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